全入時代、大学の社会的責任(USR)が問われている(4)

上地 大学という組織の特性を考えると、教授は研究室や学部・学科の独立性が強く、必ずしもトップダウンが効かないところがあります。大学は大きな組織でありながら、実は小さな独立組織の集合体で、しかも教授たちは一国一城の主ということで、全体の結束力は弱いと思います。また、職員の方々は縦割りが強く、数年で担当が変わります。そうすると、どうしても「余計な仕事を増やさず、前任者と同じ仕事をすればいい」という考え方になりがちです。

16頁におよぶCCCの調査票は、ISO14001を取得していないと、部署間をまたぐデータを集めるのもまったく初めてで、決済は誰を通せばいいのかとか、どこからどう手をつけていいのかわからないという反応が返ってくることもあります。大学の教職員も個別性の高い組織なので、何万人もいてキャンパスも別々に分かれている学生たちがまとまるのはより難しいでしょうね。ただ、それだからこそ、教授や職員の方々は、やる気のある学生に期待している面もあると思います。

服部 そうですね。環境活動は、基本的には社会的に評価されることなので、大学側も協力してくれることが多いのですが、表現の仕方には気をつけないといけないというのが実感です。

小竹 環境省が行った、教育機関や企業の環境教育の実施状況に関するアンケート調査の結果、大学では一般教養で環境教育を取り入れるところが増えているけれども、フィールドワークや演習型の実践的な教育プログラムになっていないという問題点が指摘されていました。学生の組織化が進まないのも、実践的なプログラムになっていないことが理由ではないでしょうか。

 環境教育は小中学生に対して社会的な倫理観の一環としているところがありますよね。それに対して、価値観が固まってきている大学生への働きかけはより緻密なプログラムが求められると思います。

――反面、スポーツイベントで人気選手が「エコ」を呼びかけるなどとっつきやすい活動も出てきています。

 SNSのおかげで、学生同士が交流しやすくなってきている面はあります。環境サークルに所属していなくても、エコに関心のある人が、スポーツごみ拾いのイベントを企画すると数十人~100人くらい集まるなど、「環境学生」とは違う層への広がりも出てきています。単純に「楽しもう」というノリの活動で、社会問題を解決したい「環境学生」とは違いますが、盛り上がっていけば全体の底上げになり、いいことだと思います。

中村 若者がたくさん集まってごみ拾いをしているのを外から見れば、取組みが活発になっているように見えるかもしれません。でも、一人ひとりがどこまで真剣に考えているかという点では疑問を感じることもあります。ただ楽しいからとか、友だちに誘われたからという受け身の人は実社会や家庭で自分から行動することはないのではないでしょうか。

学園祭もそうですが、ゴミの分別でも、罰則などはっきりした取決めをつくったり、自然に分別できるような環境を整備したり、清掃を習慣化したり、仕組みのほうからアプローチしていかないと、成果に結び付かないと思います。

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