はじめまして、旅行口コミサイトのトリップアドバイザーでマーケティングと広報を担当しております、三橋竜二(みつはしりょうじ)です。
トリップアドバイザー日本オフィスでは、グローバルなマーケティングやPRのイニシアティブのほかに、日本独自の企画として、旅行に関係したさまざまな切り口のランキングや、インフォグラフィックス集、世界の絶景スポットのまとめなどのコンテンツを、定期的に制作し公開してきました。
この連載では、これらのコンテンツを発表することになったいきさつや、その具体的な制作プロセス、公開を通じて得られた効果や気づいたことなどをまとめてみたいと思います。
さてその前に、私事ではございますが、つい先週まで、遅い夏休みをいただいて、東南アジアのいくつかの島々を、10日間ほど旅しておりました。行き当たりばったりの旅行でしたので、旅先でスマホを片手にトリップアドバイザーのアプリを駆使して、宿からレストラン、現地でのアクティビティまで、口コミの評判のいいものから好みを探して、楽しんでおりました。
自社のサービスの良さを再認識するとともに、いくつかのマイナーなバグなどもみつけたりしていたのですが、ある時ふと思い立ち、アプリを離れてブラウザで「滞在していたエリア名+レストラン」というキーワードでウェブ検索をしてみました。
ありがたいことに、検索の1位はトリップアドバイザーのレストランランキングページだったのですが、2位には、日本人経営の現地オプショナルツアーの会社のウェブサイトがヒットしました。
クリックしてみると、そのツアー会社のウェブサイト上に作られたブログスタイルのレストラン紹介ページで、楽しそうな食事風景やおいしそうな料理の写真とともに、スタッフの皆さんのお気に入りのレストランが多数紹介されていました。
それは、紹介記事というよりは、スタッフみんなで、おいしいものを食べた日記に近いものでしたが、それが逆に記事の信憑性を高めいて、私はそこで紹介されたレストランのいくつかを訪問してしまいました(ちなみにそれらのレストランは、トリップアドバイザーでも結構人気でした)。
サイトにはそのほか、おすすめのホテルやゲストハウス、マッサージ店やお土産店、さらには現地でのタクシーやチップの相場などの、旅のお役立ち情報のページも用意されていました。
そして、それらのページの最後には、ツアー会社の店舗では、さらに詳しい情報を掲載した現地スタッフ手作りの周辺マップも無料で配布しているほか、日本人スタッフも常駐しているので、ツアーの予約でなくても、お気軽にお越し下さいとの文言と、店舗への丁寧なアクセスマップが掲載されていました。
そのサイトを見た私の感想は「なんという商売敵…」ではなく、「なんていう見事なインバウンドマーケティング※」というものでした。
インバウンドマーケティングの正しい定義に当てはまるかはともかく、自分たちがこれまでにコンテンツの公開を通じて目指していたことは、まさにこういうことだと感じました。
要するに、自分たちの得意分野に関して、自分たちが持っている情報や素材を生かしてコンテンツとしてウェブ上に公開し、メディアで紹介してもらったり、検索を通じて見込み顧客(私たちの場合は、広く旅行好きの人たち)にリーチし、実際に活用してもらったりソーシャルメディアを通じて友達にもシェアしてもらったりして、最終的には自社の商品やサービスを利用してもらうきっかけにする……まあ実際のところは、私たちのコンテンツはとりあえずロゴだけでも覚えて帰ってね、というレベルなのですが、この旅行会社のサイトでは、それほど大きな労力やお金をかけずに作ったウェブコンテンツから、リアルの店舗を訪問する導線までがごく自然に確保されていることに、素直に感動したのでした。
というわけで、今回は前置きで終わってしまいましたが、次回からは、私たちが公開してきたコンテンツの具体的な制作プロセスなども含めてご紹介していきたいと思いますので、しばらくおつきあいのほどよろしくお願いします。
※インバウンドマーケティングとは、見込み客のほうから近寄ってきてくれるようなマーケティングを指す。
アメリカで注目を集めている“Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(1)
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