店頭での情報伝達効果を高める3つの方法
商品パッケージは購入前と購入後にそれぞれ、「価値の伝達」と「価値の創造」という2つの役割を持っています。「生活者と企業との価値共創」「マルチチャネル化」といったプロモーションの注目課題に対して、パッケージができることを考えていきたいと思います。
まず、デザインの持つ力について。デザインにはアフォーダンスと呼ばれる、“相手にある行動を仕向ける力”があります。この力を販促に生かした成功事例が、エレコムの高機能マウスパッド。パッケージに、商品特性である“ぷにぷにの感触”を試せる部分を付けました。
通常、体感用のサンプルを用意しても設置してもらえるかは店舗次第ですが、パッケージなら必ず商品と一緒に設置できる点が強みです。人が無意識に触りたくなるデザインにしたことで、効果的に商品特性を訴求し、ヒットにつなげた好例です。
次に、パッケージを使って店頭で効果的に情報伝達するための、3つの方法を紹介します。
1つ目はIMC(統合型マーケティングコミュニケーション)の実現です。商品開発、広告宣伝、販促の各部門が連携し、一貫性のあるメッセージを発信することが重要です。そこでおすすめの方法が、「○○のような」(メタファー)を共有すること。
例えばゴディバは、「宝石のような」というテーマを共有し、商品デザインからパッケージ、広告、店舗設計にいたるまで一貫性のあるコミュニケーションを実現しています。このテーマを最初に定義することで、商品、広告、店頭に一貫したコミュニケーションが生まれます。
2つ目は、キービジュアルを最初につくること。パッケージにも店頭にも広告にも一貫したキービジュアルを使うことで、記号として消費者の記憶に残り、コミュニケーション全体に一本の軸を通すことができます。
3つ目は、POPとパッケージの情報を切り分けること。パッケージには、店頭で手に取ってもらうことと、ブランドをつくることの2つの役割があり、これら2つの役割を飛び出してしまうような情報は記載しない方が良いとされています。
例えば、「○日間使える」といった購入時だけに必要な情報は、ブランドイメージを壊す場合があるためです。また、パッケージに記載した情報に問題があった場合、商品回収のリスクも生まれるため、情報の性質によりPOPをうまく活用すると良いでしょう。
“経験価値”を生み出せるメディア
パッケージによる販売促進について考える時、「経験価値の創出」は重要なキーワードです。パッケージは、情報収集、店頭、購買、使用、廃棄……という一連の流れの中で長期にわたって顧客と接するため、経験価値を創出する機会が多いメディアと言えます。例えば、「ドゥカティ」というバイクは木箱で届き、購入者自らバールで開ける。その一連の行動を楽しむという経験を、パッケージでつくっていると言えます。
また、“触れられる”点もパッケージのメディア特性の1つ。例えば、明治は自社の商品パッケージを使って工作する「パッケージクラフト」の遊び方をウェブサイトで紹介しています。パッケージによる経験価値の創出は、アイデア次第でいくらでも方法があるでしょう。
また、売り場からの情報を商品開発や販促、情報発信に生かせるルートがあると、パッケージの販促効果は非常に高まります。売り場からのインプットがうまくいくと、①商品価値の再発見、②消費者インサイトの理解、③売り場で必要とされる情報の把握、といった影響が期待できます。
例えばネスレ日本は、「キットカット」と九州弁の「きっと勝つと」が似ているため、受験生がゲン担ぎに購入しているという情報を、商品パッケージや販促企画に生かしました。これは①の好例と言えます。
最後に、「Package to Online(PtoO)」の可能性について触れておきます。「Blippar」というスマートフォンアプリは、起動してカメラ越しに対象の商品パッケージを見ると、クーポンやウェブサイトへのリンクなどさまざまな情報を得ることができます。このアプリの登場により、商品購入者をオンラインに誘引し、パッケージでは伝えきれないより多くの情報を伝えられる可能性が生まれています。
ただし、オンラインの情報を広めるには「コンテンツの魅力」が重要であり、「Blippar」のようなシステムをただ使うだけでは、話題化は望めません。ですから、今後は今まで以上に、情報発信の仕掛けまでを含んだ包括的なマーケティング戦略ありきで、商品開発に取り組む必要があります。パッケージも、その一貫した戦略に基づいてデザインすることで、販促活用の可能性がより広がるでしょう。
(次回予告)
次は、パナソニックです。