ケータイ・スマートフォンジャーナリストの石川温氏が注目するアプリを紹介。ここでは、『販促会議』2013年10月号の記事を掲載します。(雑誌掲載当時の情報をもとに書かれた記事です)
石川 温(いしかわ・つつむ/ケータイ・スマートフォンジャーナリスト)
1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。
(左)店頭でスマホを使い、評価やレビューを調べる消費者が増えている。
その場で納得してすぐに購入してもらうという点では、EasyPayは面白い取り組みと言える。
(右)アプリではバーコードをスキャンして支払いするだけでなく、スタッフを呼び出したり、
故障や相談カウンターの待ち時間なども把握することが可能だ。
スマートフォンの普及で「支払い」という行為が変わろうとしている。
例えば、スターバックスでは、支払いに自社が発行するプリペイドカードが利用できるが、アメリカではプリペイドカードがアプリ化され、スマホだけで支払いすることが可能だ。日本でも、既に「おサイフケータイ」によって、コンビニなどでの支払いができる。
しかし、スターバックスのアプリがすごいのは、画面上にバーコードを表示、それをPOSレジが読み取ることで支払いが完了するのだ。おサイフケータイが採用する技術規格である「FeliCa」や世界的に普及が進む「NFC」などは不要。何も着いていないiPhoneで、画面を見せるだけで支払いを終えることができるだけに、利用者が一気に増える可能性もある。
「こんな支払い方法があったのか」と驚かされるのが、アップルのApple Storeアプリの「EasyPay」という仕組みだ。iPhoneを手掛ける同社が商品情報を提供し、通信販売で買えるアプリなのだが、このアプリをインストールしたiPhoneを直営店であるApple Storeに持ち込むと、そのアプリだけで製品を購入し、そのまま支払いを終えることが可能だ。しかも、その支払いの流れがすごい。
まず、ユーザーはApple Store店内で、買いたいものを手にする。iPhoneを取り出し、アプリを起動。アプリで買いたい商品のバーコードを読み取った後、アプリ上の決済ボタンを押すと支払いが完了し、そのまま商品を持ち帰れるという仕組みだ。この間、店員さんとの接触は一切不要。はたから見ると、万引きしているように見えてしまうが、これでも全く問題なく店舗を出ることができるのだ。
このアプリではあらかじめIDの登録が必要で、しかもIDにはクレジットカード番号が登録されているので、決済もそこから引き落とされるというわけだ。
この仕組みはアメリカなどで導入され、日本のApple Storeなどでも利用できる。実際に試してみたが、週末など店内が混雑している際、店員さんを呼び止めなくてもスピーディに買い物ができてとても便利だ。ただし、やはり、何となく「万引きを疑われたら嫌だ」という小心者的なキモチが働いてしまう。そんな時には店員さんに「アプリでこれを買ったので袋を下さい」と言えば、堂々と店舗をあとにすることができる(ここで店員さんを呼び止めるなら、わざわざアプリで購入しなくてもいい気もするが)。
利便性はさておき、現金もクレジットカードも出さずに、店員さんと会話をせずに買い物ができるという未来体験はぜひ一度、味わっておくといいかもしれない。
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【更新履歴】2013/10/07
本文中の一部表記を変更いたしました。