「何でもやってみろ、失敗も勉強」
放送開始後、これらの駅やロケ地には人が押し寄せていて、私たちも「ここぞ」とばかり、あまちゃん効果に乗っかっています。元々三鉄は、観光客のために高い橋の上(大沢橋梁や安家川橋梁)でスロー運転をし、秋には鮭が遡上する風景が見られるなど人気でした。
NHKのプロデューサーは、このスロー運転の場所を見逃さず、夏ばっぱが大漁旗を振ってアキちゃんを送り出すシーンにつながりました。今では、橋や川の説明だけでなく、「夏ばっぱがアキちゃんを送り出したシーンで撮影が行われた場所です」とアナウンスしています。
ウニ丼の車内販売もドラマが始まってからです。久慈駅で売っていたウニ弁当の箱は四角でしたが、番組では丸型。久慈の金野本部長は早速、「ぱくるべ」とかすり半纏、北の海女の鉢巻を社員のアテンダントに着せ、番組と同じ丸型ウニ弁を売り出しました。「限定20食」ですが、あっという間に売り切れます。
「お座敷列車 北三陸号」も登場しました。冬には「こたつ列車」を運行していましたが、急きょ企画し、5月から運行を開始しました。「この車両で潮騒のメモリーが歌われました。ロケ車両です」と車中で紹介すると、うぉーーと大きな歓声が上がります。
「受けそうなものは即刻取り入れる」。こうした発想は、最近は社員からも出るようになりましたが、はじめは沈黙の東北人、なかなか意見を言ってくれない年月がありました。そういう意味で、望月社長のリーダーシップが社風の改革につながっています。「何でもやってみろ。失敗も勉強」と言い続けてきました。「何かあれば草野さんに相談してみろ」と付け加えるので、社員も自然と私に相談にくるようになってきました。そうした社風が今は完全に自分たちのものになっています。
ちなみに、「じぇじぇじぇ!」も、フィクションがノンフィクションになってしまったものの一つ。岩手県沿岸では、3つの言葉で驚きを表現します。沿岸北部は「じゃじゃじゃ」、宮古市などの中央部は「ややや」、そして大船渡、陸前高田市など南側は「ばばば」。番組が始まり、要所要所で「じぇじぇじぇ」が流れると、その“新しい方言”は地元でも一気に広まりましたが、当初は「『じぇじぇじぇ』って誰も言わねべ」と住民は冷ややか。ところがさらに広まると、何にも言わずに「じぇじぇじぇ」と言うようになり、今や本当の方言に昇格。私も日々、「じぇじぇじぇ!」と話し合ってます。