ロングセラーを活性化させるための秘策とは?
2013年6月10日に森永ミルクキャラメルは発売100周年を迎えました。100年商品である森永ミルクキャラメルの認知率は97.8%と非常に高いのですが、摂食率(直近半年に月1回以上食べたことがある)は7.8%※。多くの人が子どもの頃に食べたきり、知っているけれど口にしていない商品だと考えられます。
森永ミルクキャラメル購買者の年齢構成を調べると、昔からの固定ファンである50、60代男女と10代男性に人気が高い一方で、菓子類の一番のお得意様であるべき10~40代女性、20、30代男性からはあまり支持を得られていませんでした。
しかしこの商品を食べていないだけでキャラメル味は嫌いではない、むしろ好意を持っていることが調査で分かりました。売上拡大に向けキーになるのは20、30代ノンユーザー(潜在顧客)の新規開拓です。と同時に50代以上のヘビー/ミドルユーザー(既存顧客)のケアも必要です。昔から支持をいただいているファンは絶対におきざりにはできません。
これらの課題に対して、わたしたちが選択したのは、お客様との接点(タッチポイント)の種類を増やすことでした。森永ミルクキャラメルは、超ロングセラーであるがゆえに、多くの切り口を持ち得えました。
100年の歴史であり、長年培った品質へのこだわり、新しい食べ方への提案、そしてお客様一人ひとりの中にある思い出などです。
それらを訴求するため、テレビCM、新聞、雑誌、Web、アニメ動画、本社の壁面を利用した巨大広告…など切り口を多く用意して、各々の話題を 親和性のあるメディアに選んでもらうことにより、露出の最大・最適化を図りました。たとえば、歴史を語るのであれば新聞、品質の薀蓄は雑誌、思い出はSNSと、老若男女に触れていただくチャンスを創出しました。
むやみに若作りをしない
広告として複数のメディアに出稿する場合は、メッセージのトーン&マナーは統一するのが常識です。同じ広告だと認識されなければ相乗効果は期待できません。
しかし今回は、コンテンツにより表現面は変更しています。一見不揃いにみえますが、97.8%という認知率のきわめて高い”森永ミルクキャラメルの黄色いパッケージ”が記号として各コンテンツを結びつけるため、同じ商品の情報としてインプット(認識)されるのです。「商品そのものが広告の記号として機能し、情報が積み重なり広がっていく」これこそが、この施策の成功の鍵だったと思います。
結果、PR投資額の10倍以上のメディア露出というめざましい成果を得られ、スーパーでは過去最高の販売数を記録。コンビニでも前年を大きく上回りました。前年比売上約70%という苦境から一気に回復し120%を超えることができました。
超ロングセラー商品の活性化という本事例の成功のポイントは「商品の鮮度が多少落ちたからといって表面だけ安易に若作りをしない」ということです。表面的な新奇性は一時しのぎにはなっても長続きせず、ともすると現在のファンを失いかねません。100歳には100歳にしかない魅力がある。それまで生きてきた年月や経験を財産として、今に役立てることで輝きは一層増す。それは人も商品もきっと同じだと思います。
※2013年、商品認知調査、全国12~69歳男女/n=1238
(次回予告)
次は、村田アソシエイツです。