アメリカ人記者が伝えた被災地の招致熱
そんなIOC担当記者の中で、あるアメリカ人記者が6月に来日した。都内だけでなく被災地への訪問も通じて全国規模の招致機運の高まりに非常に感銘を受けていた。石巻市女川町の社会人サッカーチーム、仙台市内の高校の先生、仙台大学の学生・教授、そういう地元の方へのインタビューで次々と発せられる招致への期待感。
アメリカでは、招致がこれだけ全国規模に拡大することは考えづらいと言う。事実、2016年のシカゴ招致の際にそれが東海岸や西海岸まで拡がった形跡は無かったらしい。後日、この記者の東北取材ルポは4ページの長編となってオリンピックの業界メディアでIOC関係者に配信されることになる。
招致後半戦において「オールジャパンによる招致」とは、他都市と戦うための「オールジャパン体制」という意味をどんどん強めていく。外務省や文部科学省の担当者からも、5分に1回電話がかかって大量のメールが飛び交う招致委員会。政府が本気で動いているダイナミズムを肌で感じながらカウントダウンは進んでいった。
企業からの出向者に加え、外務省と文部科学省からの出向者が招致委員会で机を並べて仕事をしていたことも「オールジャパン体制」の表れだと思う。その効果は広報の現場の仕事においても、政府のコメントや写真の入手など、本来はハードルが高くて前回招致ではできなかったことの実現にもみられた。
官邸訪問 2013年1月17日 Photo: Tokyo 2020 / Shugo Takemi
IOC総会当日、100人の代表団を運ぶ車列には安倍総理、竹田会長、猪瀬知事らプレゼンター、政府関係者、スポーツ界、経済界、本当に日本を代表するメンバーが乗っていた。車列の中で、「オールジャパン」を心底感じながら会場に向かった時の気持ちを忘れることはないと思う。
開催都市発表直後 Photo: Tokyo 2020 / Shugo Takemi
次回は、他の候補都市とのPRバトル、メッセージ開発などコンサルタントとの共同作業など、招致実務の裏側を紹介します。
【「2020東京五輪 戦略広報が明かす勝利の方程式」バックナンバー】
- (3)スポーツ界に戦略広報は必要か?
- (2)マドリッド、イスタンブールとの国際コミュニケーションバトル
- (1)オールジャパン!!