人に話したくなる「面白そう」を作る、「リアル脱出ゲーム」のプロモーション――SCRAP

人に言いたくなるのは「面白そう」だから

SCRAP代表 加藤隆生 氏

世の中に流通しているチケットというのは、99%ネームバリューで売れると思っています。アーティストなら有名な方が売れ、プロ野球の球団なら人気のある方が売れるわけです。

しかし、リアル脱出ゲームは、「有名人が出るから売れる」という構造から逃れたいと思っています。アイデアや企画力といった、会議室で話したことのクオリティが高ければ売れるという図式の中で戦っていきたいと考えています。

リアル脱出ゲームが売れた理由をよく聞かれますが、「みんな参加者になりたかったから」ではないかと答えます。

僕のマニアックな願望だと思っていた、「自分の肉体で物語を体験したい」、「自分の肉体で物語を進めたい」と思っている人が、実際にはたくさんいました。

もう一つの理由は、「人に言いたくなるイベントだった」ということです。

リアル脱出ゲームは基本的に、宣伝費を一切出しません。では、どうやって広がったのかと言うと、それはソーシャルメディアです。イベントに来た人にアンケートをとると、ほとんどの人がイベントを知った方法としてツイッターやフェイスブック経由で友人から聞いたと書きます。

人に言いたくなる理由というのは「面白そうだから」しかありません。

「面白かった」と言ってもらうことも重要ですが、興味のない話はどんなに熱っぽく語っても伝わりません。

話す側だけでなく、聞く側の熱量も上げておく必要があります。

そのためには「何それ? 面白そう」と思わせておく以外に方法はありません。

「面白そう」は作れる

僕らは「面白そう」は作ることができると考えています。

まずは分かりやすいものを作る。分かりやすくないと面白くありません。

3万枚近くチケットを売った、漫画『宇宙兄弟』と組んだ「月面基地からの脱出」というイベントは、キャッチフレーズが「酸素、残り1時間」でした。

何のために謎を解くのか、失敗するとどうなるのかというメッセージがタイトルとキャッチフレーズに全て含まれています。

チケットを買う人は、イベントを体験してから買うわけではないので、参加すれば面白さが分かるという企画は、企画の時点で負けています。

二つ目は、すでにある面白さを利用することです。

リアル脱出ゲームは、すでにあったウェブ上の「脱出ゲーム」という面白いものをデジタルからアナログに変換して別の「面白そう」を加えました。

もう一つ、人の記憶にある「面白さ」を利用することです。

すでに持っている知識を利用するのは重要です。あるリアル脱出ゲームでこんな設定をしました。アタッシュケースを開くと爆弾が入っていて、赤い線、黄色い線、青い線が出ている。手元にははさみ。詳しい説明はしませんでしたが、「これはどういうことですか」と聞く来場者はいませんでした。みんなこれまで読んだり見たりした中にそういうシーンがあったからです。

人々の中に記憶としてある「面白かったこと」を一つのきっかけで呼び起こしてあげることは、大きなヒント、重要なコツだと思います。

リアル脱出ゲームの集客プロモーションというのは、実はないんです。

僕らは、いかにリアル脱出ゲームを魅力的にするのか、ということだけを考えてきました。

宣伝について考えるというより、面白いものを作れば、人が勝手に宣伝してくれるだろうというのが基本的な考え方です。

僕らがやっていることはシンプルです。「面白いものを作る」、そして「人に言いたくなるようなものを作る」。人に言いたくなるようなものは面白そうなものである、面白そうなものとは、物語の力を利用したものであるというのが我々のプロモーションに対する一貫した考え方です。


次回は、アキレスです。

販促・集客メディアフォーラム事務局 2013
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