原点に立ち返って生まれた『伊勢丹』のオリジナルタータン

呉服屋時代に既に生まれていたファッションの考え方

10月29日に朝日新聞、読売新聞に出稿された広告。矢野顕子さんが新たに書き下ろした「ISETAN-TAN-TAN」の歌詞が掲載されている。

導入当初から現在まで一貫して伊勢丹が守り続けているのが、ショッピングバッグのあり方だ。

「ショッピングバッグは商品を入れて運ぶだけのものではない。ましてや広告媒体でもない。お客さまお一人おひとりのファッションアイテムとして機能するものなのです。それが、当社のショッピングバッグの考え方として、脈々と受け継がれています」
と、同社宣伝部本社担当部長 西村文孝氏。

この考え方の原点はショッピングバッグ誕生からさかのぼり、1886年に創業した伊勢屋丹治呉服店にある。呉服屋当時の企業理念には、既に創業者のファッションに対する見識が書かれていたという。

そのひとつが「女性の服飾美の中心をなすものは帯である」。
そして、もう一つが「和装の美は人の目を楽しませるものであるべき」。

西村氏はかつて自社の歴史について調査しているときに、これらの文献を目にし、“ファッションの伊勢丹”の原点を再確認した。

「以前にシューズデザイナーのパトリック・コックスが“靴は絶対に身につけなくてはいけないアクセサリーだから、ファッション性が高くて面白いんだ”と話していました。創業者が記していた帯の話はまさにそれと同じで、その考え方はショッピングバッグにも通じるものでした」。

伊勢丹で商品を購入した人は、必ずショッピングバッグを持って帰る。つまりショッピングバッグは誰もが身につけなければならないもの。それゆえに、一人ひとりにファッションアイテムとしてコーディネートされたときに成立するものでなくてはいけない――。

「今回のリニューアルにあたり、そのことがより明確になりました。そして可視化される新しいデザインだけではなく、伊勢丹のファッションの原点となっている考え方も、あらためて世の中に伝えていきたいと思いました」(西村氏)。

こうした背景から、同社は受賞を機に、あらためてファッションとしての原点とアイデンティティを見直し、タータンのリニューアルを決めた。そして以前使用していた「マクミラン/アンシェント」の色をベースに、スコットランドでオリジナルのタータン布地を織ったのである。

スコットランドにおいて、タータンの柄は家紋のようなもので、いわばアイデンティティの表現でもある。目的に応じて織られたそれぞれの布には、名前が付けられる。

新しいタータンの名前は、「マクミラン/イセタン」。

同社はそのデザインと名前を全世界のタータンを一括統制する国の機関 スコットランド タータン登記所に正式登録した。こうして新たな布地を織ったことで、同社は呉服屋時代から続く企業理念や“ファッションの伊勢丹”という原点に立ち返った。

そして、その作業を通して自分たちのアイデンティティを見直し、さらには未来をも見据えることとなった。

10月30日に登場した新しいショッピングバッグは9種類。この日から新宿店本館1階ザ・ステージでは、人気ブランドとのコラボレーションアイテムを中心に「マクミラン/イセタン」を使った限定品が販売されるイベント「ISETAN TARTAN ワタシノタカラバコ」が始まった。

また伊勢丹を愛するあまり、自主的に「ISETAN-TAN」という歌までつくってしまったシンガーソングライター 矢野顕子さんがiTunes Store限定で伊勢丹オフィシャルソング「ISETAN-TAN-TAN」をリリース。

これは今回のリニューアルに合わせてつくられた新曲だ。配信の際のジャケットにも、「マクミラン/イセタン」を使用。

この曲は11月12日まで、伊勢丹各店舗の館内放送として聴くことができる。さらに10月29日の朝日新聞と読売新聞の朝刊には、矢野さんをモデルに起用し、新曲の歌詞が掲載された新聞広告を出稿している。

同社では今後、「マクミラン/イセタン」をショッピングバッグや企画商品に使用するだけではなく、のれんやCIロゴと同様に、「伊勢丹を表わすブランディングツール」のひとつとして活用していく考えだ。

企画制作 三越伊勢丹ホールディングス+博報堂+スマイルズ*スマイルズ研究所
D 岡本健
撮影 新津保建秀
出演 矢野顕子

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