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【連載】「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」――福里真一
1、はじめに
2、第1回「電信柱の陰からおずおずと語りはじめる」
3、第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」(こちらの記事です)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(1)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(2)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(3)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(1)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(2)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(3)
第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」
福里真一(ふくさと・しんいち) ワンスカイ CMプランナー・コピーライター
どうも、こんにちは。宣伝会議の片隅にひっそりと設けられた、この「電信柱の陰」の存在に、よく気づいてくださいましたね。
実はこの連載、ひそかに先月からはじまっていたのですが、これを書いている現在までのところ、反響は…ゼロです。
人生において、悲観的な予想がことごとく当たっていく気持ち良さについては、常々体験してきましたが、今回もまたそれを体験させていただきつつあるようです。ありがとうございます。泣。
それにしても、書くのって、めんどうくさいですね。しかも、誰もろくに読んでないのに!あ、すいません、つい本音がもれてしまいました。
もしかすると、あなたは、私と編集長に続く、三人目の読者かもしれません。稀少価値ありです。
さて、私の場合、「電信柱の陰」的な傾向がはじめて現れたのは、幼稚園の休み時間において、でした。
休み時間になると、同級生たちは、校庭に飛び出し、(あれ、校庭じゃなくて幼稚園の場合は園庭と言うんでしょうか)中央に設置されたブランコやすべり台で遊ぶわけですが、私はひとり、隅っこの方にある砂場に直行していたんですね。
砂場の上には、藤棚があって、それを支える柱が四方に立っているわけですが、その柱のまわりをぐるぐるぐるぐる何周も回ることで、休み時間をやり過ごしていた。
いや、なんか充実していたんですよね。むしろ、休み時間は、楽しみだった気がします。
藤棚の柱のまわりをぐるぐるぐるぐる回りながら、何か考え事(?)をしたり、ブランコやすべり台で遊ぶ同級生たちの姿を眺めたり。
また、同級生のやつら、所詮は子供なんで、ろくでもないわけですよ。
ブランコならブランコで、何人かで乗れるそれなりに大きなブランコだったんですが、譲り合おうなんて気持ちはさらさらない。とにかくブランコのベストポジションをめぐる、文字どおり血みどろの争いが、毎回行われているわけです。
しかも、その間にも、ブランコはけっこうなスピードでこがれ続けているわけですから、かなり危ない。どなる。つかみかかる。なぐる。落ちる。ぶつかる。血が出る。泣く。先生出てくる。といったことが、何ひとつ学ばれることなく、毎日のように、行われているわけです。
そんな様子を眺めながら、人間って醜いなあ、こんな争いに満ちた世の中にこれ以上生きていきたくないなあ、…とまでは思っていなかったと思いますが、少なくとも、子供って野蛮だなあ、あんな人たちとはかかわりあいになりたくないなあ、ぐらいは、思っていた気はします。
それにくらべて、藤棚の柱のまわり、という空間の安全性と静謐な雰囲気は、すばらしかった。
話は変わりますけど、最近の若者は草食系だ、というようなことが、やや否定的に語られますけど、草食系って、いいことじゃないですか。
もし、草食系というのが、自分に対して謙虚で、そして欲望の少ない人々のことを指すのだとしたら、私も、その世代の中で育ちたかったです!
私、顔が草食系っぽくないのでそう見えないですが、かなり草食系を先取りしていたような気がします。
本当は、キリンとかシカのように、ほっそりとした輪郭の顔に優しい目をしていたら、もっと草食系だということがわかりやすかったはずなんですが、全然そうじゃないので…残念です。
えーと、話どこまでいきましたっけ。
そうです、幼稚園時代、藤棚の柱のまわりをぐるぐる回りながら、同級生たちの血と汗と涙にあふれた人間模様を、ぼんやりと眺めていた。それは、そんなにいやでもなければさびしいわけでもない、むしろ、不思議と心地いい時間だった、という話をしていたかと思いますが、うーん、どうなんでしょう、そこには少し嘘もあるんでしょうね。
やっぱり、友達と一緒に、わーわー騒ぎながらブランコを勢いよくこいだりした方が、絶対に楽しいわけでしょ。
そこでたとえブランコを奪い合ってケンカになったとしても、それをきっかけに固い友情がめばえたりして(経験したことないのでよく知りませんが、ドラマとかでは必ずそうなっていますよね)、かえっていい思い出になったり。
人生で楽しいことは、藤棚の柱のまわりではなく、ブランコで起こっている。それをまず、認めましょう。
でも、だからこそ、「藤棚の柱」派は、人生が楽しくないぶん、その資質をせめて企画に生かしてもとをとろう。神様から慰謝料とってやる!というのが、この連載の趣旨なわけです。
なんだか急に熱くなってますけど、みなさんついてきてますか。次回以降は、なぜ「藤棚の柱」派が、企画に向いていると言えるのか。夢と希望に満ちあふれた話を書いていく予定です。無理かもしれないですが。
しかし、そもそも、この連載のテーマ、「電信柱の柱」だったはずなのに、いつのまにか、「藤棚の柱」になってしまっていますね。
どうしてこんなことになってしまったんでしょうか。
そして、宣伝会議さんは、次回もこのあまりにもゆるすぎる連載を続けてくれるのでしょうか…。
AdverTimesでの記事配信は今回が最終回となります。続きは書籍でお楽しみ下さい。
また来週から書籍刊行を記念し、著者の福里真一さんと谷山雅計さん、髙﨑卓馬さんの特別対談を公開予定です。
【連載】「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」――福里真一
1、はじめに
2、第1回「電信柱の陰からおずおずと語りはじめる」
3、第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」(こちらの記事です)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(1)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(2)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(3)
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1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業。92年電通入社。01年よりワンスカイ所属。いままでに1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、吉本総出演で話題になったジョージア「明日があるさ」、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、トミー・リー・ジョーンズ主演によるサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」など。その暗い性格からは想像がつかない、親しみのわくCMを、数多くつくりだしている。