「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」刊行記念 特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(1)


【連載】「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」――福里真一
1、はじめに
2、第1回「電信柱の陰からおずおずと語りはじめる」
3、第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(1) ー こちらの記事です。
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(2)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(3)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(1)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(2)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(3)

得意なことしかやりたくない

髙﨑 僕も企画段階では、全然変えて構わないです。でも決まった後に、当初の企画が傷ついていくことがあるじゃないですか。些細なことだと思うかもしれないけれど、そのことを許す判断が後に相当マイナスに働くと思っていて。福里さんは、企画が決まったあとのクオリティコントロールってどうしているんですか?電信柱の陰から急に出て行って、「それは、ちょっと…」みたいなことを言うんですか。

福里 えっと、ですね…。言いやすい監督には言って、言いにくい監督には言わないという感じでしょうか(笑)。それは半分冗談ですが、心のどこかに「企画までは私がやりました。さあ、あとはあなたたちのお手並みを拝見しましょう。実力を存分に見せてごらんなさい」みたいな気持ちではありますね。信じられるスタッフにゆだねる、というか。

髙﨑 全然、電信柱の陰から見てるタイプじゃないじゃないですか!どっちかっていうと、お城の上からでも見てそうな感じですよ。

福里 いえ、電信柱の陰から、祈るように見守っているんです。

髙﨑 僕は、根拠のある自信をもって企画をプレゼンしてはいるんだけれど、でも不安はどうしょうもなくある。その不安を大切に持ったまま現場にいるようにしています。たぶん、ずっと企画をしていたいんですよね。「あっ、このセリフちょっと違った」とか「このシーン、ワンカットで撮ったほうがいいかも」とか気になると、根こそぎ変えたくなってくる。それもこれも仮編の部屋で「あーーー」となるのが嫌で。その嫌な気分にならないために努力をし続けたいというか。

福里 僕の場合は、CMプランナーという職種ではありますが、基本的にコピーライターなんですよ。なので、CMの中でも得意なところは、セリフとナレーションだという思いが強い。それ以外の部分は、それぞれ演出家の方やスタッフの方に力を発揮していただいてつくっていこう、という感じなんです。変に僕が不得意なことにまであれこれ口を出すよりは、その方が結果的にいいものができると思っています。もともと性格的にも、自分が得意なことしか、やりたくないという思いが昔から強いんですよね。苦手なことは絶対にやりたくないし、自分の弱点を克服して伸ばそうとか絶対に思わないタイプなんです。

髙﨑 企画でもそうですか。自分が思っていないようなタイプの企画にはいかない?

福里 やりたい、やりたくない以前に、例えば映像が主役になるみたいな企画は思いつかないんですよ。

(次回に続く)


【連載】「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」――福里真一
1、はじめに
2、第1回「電信柱の陰からおずおずと語りはじめる」
3、第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」
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福里真一(ふくさと・しんいち)ワンスカイ CMプランナー・コピーライター
1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業。92年電通入社。01年よりワンスカイ所属。いままでに1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、吉本総出演で話題になったジョージア「明日があるさ」、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、トミー・リー・ジョーンズ主演によるサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」など。その暗い性格からは想像がつかない、親しみのわくCMを、数多くつくりだしている。

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