そして3年目にしてはじめて、調査モノの取材を任さることとなった。
調査報道は、時間とコストがかかる。従って当時も今も、それほど多くの企画が立てられるわけではない。しかしそのひとつを担当できることになって、ようやくやりたい仕事に辿りつけたとの思いだった。
担当したのは、通産大臣が主導し、カナダからLNG(液化天然ガス)を輸入する"国家プロジェクト"を徹底検証するという企画だった。
同プロジェクトは、商社や複数の電力会社が参加していて、"エネルギーの安全保障"のために必要という触れ込みだった。
当時も今も、LNGはブルネイやインドネシアなど、東南アジアからの輸入に頼っている。そのため、カナダからも輸入することで、供給源が分散され、万一、東南アジアからの供給がストップしても、エネルギー不足に陥ることはないという点が強調されていた。
一見、理にかなっているようだが、しかし取材を進めるうち、このプロジェクトには政治利権が絡んでいて、価格がかなり割高になるということがわかってきた。
問題は、その価格を割出し、いかに割高であるかを証明することである。逆に言えば、そのことを実証できないかぎり、噂話の羅列で終わってしまう。もちろん、通産省に取材にいったところで、間違っても、そんな資料をくれることはない。
どうすれば、この問題を解決できるか。さんざん思案したあげく、カナダ政府の情報公開法を使って同プロジェクトに関する資料を請求してみることにした。