社会貢献型商品は、どこまで消費者の心をつかむことができるのか(2)

「日本の森を守りたい」思いで全国の森と店頭がつながり始めた

本シリーズ(1)でも紹介した「EVI環境マッチングイベント2013」が2013年11月11日、東京・国際フォーラムで開催され、環境配慮型の商品開発やマーケティング・プロモーションの先進事例や新たなプロジェクトが紹介された。

なかでも注目を集めたのは、地域の特産農産物とその地域の森林保全活動から生まれたオフセット・クレジットを組み合わせたモデルで、捨てられていたりんごから生まれた信州産やわらかフルーツドライに加えて、秋田県の菌床椎茸「八峰美人」が紹介された。菌床椎茸は八峰町の特産品だが、生産過程で出てくる規格外品の販路がなく、処理費をかけて廃棄物として捨てていたという。

EVI推進協議会の加藤孝一氏(カルビー・カルネコ事業部事業執行担当)らが白神山麓・八峰町有林J-VERプロジェクトの視察に行ったことをきっかけに、八峰町の生産者との議論が始まった。そして、ほかの八峰町産の農産物・林産物・果樹とともに、八峰町有林J-VERプロジェクトのオフセット・クレジットをつけて新ブランド「八峰美人」として発売するプランがまとまったものだ。登壇した八峰町役場・農林振興課林業係の木藤誠主査は、地元産のJ-VERとともに「豊かな自然、良い水、良い空気、良い環境に恵まれた秋田県八峰町の農業活性化を目指す」と語った。

販売のパートナーに名乗りをあげたのは「おむすび権平衛」の株式会社イワイだ。同社では、環境保全型農業の推進、日本の食糧自給率の向上を目指しており、自然環境と農業を守る理念の部分でEVIに共感し、今回のパートナーシップにつながったという。今後、「おむすび権平衛」で出されるお惣菜やお味噌汁に「八峰美人」が使われる。

同社の商品部部長、外岡学氏は、「規格(サイズ)よりも大事なのは味と香です。八峰町の豊かな自然環境のなかでつくられた農産物を活かした惣菜メニューを開発し、当社の理念である環境保全型農業の推進、日本の食糧自給率の向上を実現していきたい」と語った。

ニューヨーク、西海岸の催事で長蛇の列。「おむすび権平衛」人気の理由とは?

平成3(1991)年の設立以来、着々と出店を伸ばしてきたおむすび権平衛だが、ついにアメリカ進出を果たした。2013年3月、ニュージャージー州のハドソン川沿い(ニューヨーク・マンハッタンの向かい側)に1号店をオープンし、好評とのことだ。数年前からニューヨークや西海岸の催事に出店し、毎回長蛇の列ができることから、今回の出店に踏み切ったという。

日本人や日系人は来店客の4分の1程度で、そのほかは欧米人やアジア人とのこと。人気の理由としては、日本食ブームやマクロビオティックの浸透などが考えられるが、おむすび権平衛の素材や生産工程へのこだわりも見逃せない。社員は全員契約先の生産農家で田植えと稲刈りの研修に参加、生産の直前に精米し鮮度を保つ、そして愛情を込めて手作りなど、米本来のおいしさを引き出すための徹底ぶりだ。来店者には、お米の味や、米の粒をつぶさない独自のふんわりとした結び方などが評価を受けているようだ。

しばしば指摘されるように、日本の食糧自給率は低下の一途で、農家の高齢化、後継者不足は深刻な問題だ。しかし、一方で「おむすび権平衛」のように、着実に愛好者を伸ばしているケースもある。競争力のある商品の開発やマーケティングさえ行っていけば、日本の農業が元気を取り戻し、食糧自給率の向上につなげていくことは可能といえそうだ。

>>次ページ オフセット・クレジット付き商品をきっかけに

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