『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』刊行記念特別対談② 谷山雅計×福里真一「企画に向いているタイプとは?」(3)

11月1日、CMプランナー福里真一さんの著書『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』が刊行になりました。これを記念し特別対談を開催。対談のお相手は刊行から6年経ってもなお、支持され続けるロングセラー本、「発想体質」になるためのトレーニング法を書いた『広告コピーってこう書くんだ!読本』著者の谷山雅計さんです。
企画に役立つ書籍の著者であるお二人に「企画に向いているタイプとは?」をテーマに対談していただきました。


【連載】「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」――福里真一
1、はじめに
2、第1回「電信柱の陰からおずおずと語りはじめる」
3、第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(1)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(2)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(3)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(1)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(2)

コピーライター
谷山雅計氏(『広告コピーってこう書くんだ!読本』著者)
 ×
CMプランナー
福里真一氏(『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』著者)

実は自分に自信がない!

――企画をする仕事は、自己表現というか個性みたいなものが根底にあるのではないかと思ってしまいがちです。

谷山:僕が若いクリエイターに講義をする際に、よく話すのは「この中で俺が一番、自分に自信がないと思うよ」っていうことなんです。「なんで、みんなそんなに自分が面白いと思うものは、他の人も面白いと思うはずだって思えるんだ?」って。つくったものに対する人の反応を見て、やっとほっとできるというか。僕、教える時は気合いが入ってるし、自信満々に見えるから、言わんとしていることが正確には伝わってないところがあるんだけど。

福里:あの、佐々木(宏)さんですら「本当は自分は自信がないんだ」と繰り返し言ってますから。

谷山:その感じ、わかりますよ。佐々木さんの場合には「どの口で、言うんですか!」とは思いますけど(笑)。

福里:佐々木さん、絶対に自分でコンテを書き始めませんから。人の企画をぼろくそに言いながらも、案が出てくるのを必ず待つんですよね。あと、とにかく意見をころころ変える。凝り固まった意見を持つことを悪と思っているらしいです。

谷山:普通、仕事の場では発言した内容に責任が発生するから、そうそう変えられないんですけどね(笑)。

福里:ですね。「この案、僕はぜんぜん面白いと思ってないんですけど」とか…、プレゼンした後で言い出すので。

谷山:「男に二言はない!」みたいなタイプは広告の企画の仕事に向いてないかもしれないですね。
福里:人の信頼は失いますけどね。

谷山:佐々木さんの場合は、圧倒的な結果を出しているから、意見を変えても信頼を得てるのだと思いますよね。

――自分に自信がない人の方が、企画をする仕事に向いているということでしょうか。

谷山:最初から自信がなかったわけではなく、ずっと企画の仕事をしてきた結果、結局は他人が価値を決める仕事なんだから、自分の判断気基準に必要以上に自信を持ったり、固執する必要はないということだと思います。

「企画体質」の睡眠学習!?

――お二人の対談を聞いて、改めて「広告の企画をする仕事」ってちょっと不思議だなと思いました。

福里:コンスタントに企画を出し続ける仕事って不思議ですよね。毎日、文化祭をやってるみたいなものですから、なんだか仕事っぽくない気もする。世の中から見たら変な仕事なのかもしれないですね。

以前、初めてCMをつくるクライアントさんと撮影現場でお話したときに「普段、どんなお仕事されているんですか?」と聞かれ、「普段もCMをつくっています」と答えたら、「えー!!CMつくるのが仕事なんですか?」と驚かれました。テレビ番組とかいろいろつくりながら、たまにCMもつくっているのかと思っていたらしく、CMをつくることが仕事のメインという人が存在することに驚いたみたいです。

谷山:僕も糸井さんに出会うまでは、広告をつくっている人の存在を意識したことはなかったかもしれないです。

福里:自然に生まれてきてるように思うんでしょうかね、CMって。

谷山:あとコピーライターと言うと、何かコピーを1本書いて「はい、終わり!」みたいな仕事と思われてますよね。

福里:世に出る企画の背後で、たくさんの企画が埋もれて終わっているのに。本当に普段、僕らがどれだけの量の企画をしているのかを知ったら、世の中でほめてもらえそうですよね。

谷山:でも1年中脳トレしているようなものだから、真面目にやってさえいれば、少しずつ頭がよくなっていく気がします。

福里:谷山さんは著書の中で「発想術」ではなく「発想体質」という言葉を使っていますよね。

谷山:僕は技術の前に、まずは基礎「脳」力を付けることが必要かなと思ってるんです。野球でもそうですよね、打つ技術を身につければホームランが打てるわけではない。基礎的な筋力とか瞬発力が必要ですし、企画も一緒かなと。

福里:僕の本も、一見まったく役に立たなさそうではあり、実際、役に立たないような気もするんですが、つまり「電信柱の陰から見てるタイプ」を「企画体質」かもしれないと言ってる本である、とも言えますよね。で、そういう人が読むと、睡眠学習のように、じわじわとその人の中の「企画体質」が目を覚ますといいな、とは思っております(笑)。

――ありがとうございました。

(本文中・敬称略)

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福里真一(ふくさと・しんいち)ワンスカイ CMプランナー・コピーライター
1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業。92年電通入社。01年よりワンスカイ所属。いままでに1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、吉本総出演で話題になったジョージア「明日があるさ」、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、トミー・リー・ジョーンズ主演によるサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」など。その暗い性格からは想像がつかない、親しみのわくCMを、数多くつくりだしている。



【連載】「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」――福里真一
1、はじめに
2、第1回「電信柱の陰からおずおずと語りはじめる」
3、第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(1)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(2)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(3)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(1)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(2)

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