【レポート】拡大する新聞の課金制電子版 各社“未来の新聞”模索

広告メディアとしての新聞の価値は十分に認識されているのか――。宣伝会議は10月の「新聞週間」、同月20日の「新聞広告の日」に合わせ、メディアニュートラル時代の新聞のあり方にスポットを当てた新聞「アドバタイムズ」を発行しました。掲載記事をWeb上に順次掲載していきます。

本紙付随型か単体型か

日本新聞協会メディア開発委員会が2013年3月に発表したデータによると、「電子新聞および有料デジタルサービス」に参入しているのは27社を数える。

電子版を展開するパソコン、スマートフォン、タブレット端末といった様々なデバイスでの展開や、経済情報や地域情報など特定のニュースカテゴリーに特化したもの、対象を本紙購読者とするか否かなど、形態は多様化し、各社各様に電子版ビジネスや、未来の新聞のあり方を模索している様子がうかがえる。

徐々に拡大する課金制電子版が今後、広告主にどのような新たなベネフィットを提供しうるのか。

この分野で先行する米国に目を向けると、ニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナルなどの主要紙を含め、全米の日刊紙約1380紙のうち3分の1に当たる約450紙が、すでに課金制の電子版を展開している。米国の新聞購読数は03年頃から減少を始め、リーマン・ショック後の09年には前年比10%を超える減少となった。

しかし、近年はスマートフォンやタブレット端末を通じた電子版購読者が増え、本紙の部数減を補うまでに成長している。購買力の高い良質な読者層を囲い込めているといえそうだ。

一方、日本国内の新聞社は、新聞販売店網の維持という大きな課題を抱えているため、電子版事業を力強く推進する米国とは環境が大きく異なる。

電子版の事業戦略を、本紙購読の維持を前提とした「本紙付随型」とするか、本紙購読とは切り離した「電子版単体型」とするか、その軸足・バランスのとり方で、各社ともに試行錯誤を続けている。各社の現状を見てみよう。

それぞれ異なる中央各紙のスタンス

中央5紙の電子版へのスタンスは各社各様

中央5紙で最も「本紙付随型」なのは、読売新聞である。本紙読者へのサービス拡充という位置付けで、読者限定で閲覧できる「読売プレミアム」を展開中だ。本紙購読維持が最大の目的であるため、料金は他紙に比べて圧倒的に安価(月額157円)に設定してある。

次いで本紙付随型と言えるのは、朝日新聞であろう。今春より「本紙購読者はプラス500円で加入できる」というキャンペーンで「朝日新聞デジタル」の入会促進キャンペーンを大々的に行っている。テレビCMや新聞広告を主としたプロモーションで、当座の目標としていた有料会員10万人を突破した。紙面ビューアーに代表される電子版機能の拡充など、電子版ならではの利便性を加速させている。

上記2紙よりもやや「電子版単体型」に近い位置にいるのは、日本経済新聞だ。他に先駆けて有料電子版を展開し、有料会員はすでに30万人を突破。専門紙の強みを生かした戦略で、会員数を増やし続けている。「本紙と電子版を合わせて、購読者数全体を増やす」という方針だ。

また、無料の登録会員まで含めると200万人を突破しており、細かなビジネス属性や行動履歴などによるターゲティングなど、新聞社にとって新しい領域のビジネスモデルも展開し始めている。日経に限らず、読者IDを取得している各社は、今後IDをベースにしたマーケティングプラットフォーム構築に挑戦し、広告主に提供できる新たなマーケティング手段を開拓していくことになるだろう。

上記3紙とは異なるスタンスで電子版を展開しているのが、毎日新聞である。スマートフォン、タブレット端末向けの有料ニュースアプリ「毎日スポニチTAP-i」は、累計ダウンロードが40万を超えている。新聞離れの進む若年層に向けて、スポニチの持つスポーツやエンタメコンテンツも交えながら、写真中心の「新しいニュースとの接し方」を追求している。

最も「電子版単体型」なのは産経新聞だ。「産経新聞iPhone版」は累計ダウンロードが約500万となり、本紙とは切り離された完全広告モデルのビジネスを展開している。

累計のダウンロード数が圧倒的であるということと、スマートフォンの画面をフルスクリーンで利用できる稀少な広告媒体として、収益を伸ばしている。1面記事の前に表示される「0面広告」や動画広告にも対応し、広告主から高い評価を得ている。

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「新聞広告の日」特別号
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