感動・感激を共有したい!
イラストの次は、テレビやラジオを通じて、大勢の人たちに向けてお魚の魅力を伝えることに興味が湧いてきました。仕事として最初に出演したのは静岡県の情報番組でしたが、プロデューザーさんやディレクターさん、カメラマンさん、観覧客の皆さんがたくさんいるものだから、すっかり緊張してしまいました。
しかし事務所の社長に「あのレンズの向こうには、何百、何千、何万という人がさかなクンの話を聞きたくて、テレビの前で待っているんだよ」と言われたことで、奮起します。そうして2000年くらいからずっと、「頭にハコフグ」のこのスタイルで、お魚に出会った時の感動や、面白い生態を知った時の興奮を、素直に表現できるようになりました。
もともと人前に出て、話をするのは苦手で、最初は「どうすればお魚の魅力をうまく伝えられるんだろう」と悩みました。でもお魚の面白さにも、お魚を好きな気持ちにも理屈はない。姿形、色模様、性格、大きさ、味わいが一匹ずつ違っていて、それはそれぞれが暮らす環境に結びついた、そのお魚にしかない魅力なんです。
とにかく「面白い!」「楽しい!」「かわいい!」「かっこいい!」「見ていて飽きない!」「もっと見たい!調べたい!描きたい!食べたい!」――その気持ちを素直に表現するようにしたら、楽になったのでギョ(ご)ざいます!
テレビ番組やイベント、講演会でお話する時は、そのお魚に出会った時の気分を思い出して、身体の中で爆発する思いをストレートに表現しています。また内容は、なるべくその土地・その場所・その時期ならではのもの、かつ自分が実際に体験したことを中心にするように心がけています。
最初はお魚が好きで好きでたまらなくて、「皆に教えよう」とか「詳しく調べて伝えよう」というよりも、「とにかく、このかわいさを描きたい!」という思いに駆られて絵を描いていました。いわゆる自己満足でしかなかったのです。
「他の人にお魚の魅力を知ってもらえるのが、すギョく(すごく)嬉しい!」と初めて思ったのは、小学6年生の家庭学習。水族館やお魚屋さんで見たお魚や、飼っているお魚、釣ってきたお魚をじっくり見て、絵を描き、そのお魚について調べたことや、お魚屋さん・熱帯魚屋さんに聞いた、図鑑にも載っていないような情報をまとめてレポートにして、毎週月曜日に提出していました。これが先生方の間で話題になり、担任の先生が「新聞として廊下にも貼り出して、皆にも見てもらおう」と提案してくれたのです。
「見てくれる友だちはいるだろうか?」とドキドキしながらそーっと覗いていたら、何人かが集まって、新聞を見て驚いたり、内容を声に出して読んだりしてくれていたんです。「自分が描いた絵や調べたことを、友だちが読んでくれるのは、こんなに嬉しいものなのか!」と感激したのを覚えています。