“大物”が証明した「日本サッカーの価値」
ASEANでのサッカー人気は、「二番目に好きなスポーツは?」と聞いても「ない!」と即答されるくらいダントツです。それにも関わらず、ASEAN各国はFIFAワールドカップに出場したことがありません(※注)。
※注:1938年にオランダ領インドネシアが出場しているが、独立国家としては出場歴がない。
一方で日本は、30年ほど前まではASEAN各国よりも弱かったのに、今やFIFAワールドカップの出場常連国となっています。この“日本サッカーの奇跡”は、シンデレラストーリーのように語られており、「あの弱かった日本が、なぜあんなに強くなったのか」と、アジアの人たちは皆、不思議がっていました。
また大物たちは、お金はあるがノウハウがなく、クラブや代表がなかなか強くならないと不満を感じていました。そこに“ノウハウの塊”であるJリーグのスタッフがやって来るということで、トップ自らその話を聞きたいと、打ち合わせの場に出てきてくれていたのです。タイ、インドネシアと国境を越え、どの国でも同じことが起きました。
「これは、何かすごいことが、とんでもないことが、起きるかもしれない…!」そう思わずにはいられませんでした。
アジアの熱を感じてもらう!
ASEANに渦巻くサッカーへの情熱や、街が放つ熱気とパワーは、どんな言葉でも、映像でも、写真でも、とても伝えきれない。この「何かとんでもないことが起きるかも」という感覚は、現場に来てもらわないと伝わらない!
そう考え、次からの海外出張はJリーグ幹部と一緒にクラブやテレビ局、企業などさまざまなところを回りました。どこに行っても相変わらず、街には「今日より明るい明日がある!」と信じている人々の熱気があり、サッカーへの情熱がありました。
ベトナムではJリーグ幹部が視察に来たことが、新聞で大きく報道されるなど、Jリーグへの注目度の高さや憧れの強さを、幹部にも知ってもらうことができました。
幹部と一緒にASEAN各国を回ることを通して、Jリーグが持つ大きな可能性を共有することができました。そうして、Jリーグとして本格的にアジアへの展開を進めていくことが決定、2012年1月に「アジア戦略室」が設置されました。
今振り返ってみても、幹部に早い段階で、アジアのパワーを直接感じてもらえたことは、非常に大きかったと思っています。
そしてここから、Jリーグの怒涛のアジア展開が始まるのでした。
(つづく)