アプリ「Blipper」が切り拓く、「パッケージデザイン to オンライン(PtoO)」

パッケージのメディア特徴は購買に近いことだ。パッケージを見る人は、商品の購入をその場で検討している人である。それだけ、販売促進におけるパッケージデザインの役割は大きい。パッケージデザインを手掛けるアイ・コーポレーションの小川亮氏に、優れたパッケージを紹介してもらう。

ここでは、『販促会議』2013年12月号に掲載された連載「販促NOW-パッケージ」の全文を転載します。
(文:アイ・コーポレーション 代表取締役 小川 亮)


プロモーション業界ではここ数年、オンラインとオフラインの相乗効果の創出というテーマが注目されている。オンラインの情報発信によって、実店舗への誘引や店頭購入に結び付けようという動きもその一つ。スマートフォンの普及によってその重要性はますます高まり、マーケティング担当者は常に、オンとオフの連携を含めたプロモーションプランを求められている。

「Blippar」は画像でも利用可能。アプリを起動してカメラをかざすとレシピブックが立ち上がり、ウェブサイトやフェイスブックページへのリンクも登場する。

今回紹介するハインツのトマトケチャップ、パッケージそのものは安心感のある見慣れたデザインだ。

しかし、iPhoneユーザーの方はぜひ、「Blippar(ブリッパー)」というアプリをダウンロードして、起動したカメラからこのパッケージをのぞいてみてほしい。まるで“飛び出す絵本”のように、レシピブックが立ち上がる様子を見ることができる。

このアプリは、特定のパッケージデザインを認識すると、iPhoneの画面上に情報を表示する仕組みで、2年前にイギリスで開発された。

パッケージからオンラインメディアへプロモーションを広げる、一つのきっかけになるに違いない。海外ではユニリーバやネスレ、サムソン、ドミノ・ピザなどが活用を始めている。

メディアとしてのパッケージの特徴は二つある。一つは、消費者との接点が多いこと。広告、店頭、使用、廃棄と長期にわたって消費者に接触する。二つ目はほかの広告メディアに比べ、表現の自由度が高い点である。

この二つの特徴を踏まえて「Blippar」を活用することで、パッケージから自社の伝えたい情報を発信したり、ウェブサイトに誘引したり、まさにPackage design to Online、“PtoO”の広がりが可能になる。

例えば、パッケージに表記しきれないアレルギー情報や分かりやすい使い方の手順、キャンペーンサイトへの誘導、アンケートの実施などさまざまな使い方が考えられる。このアプリの日本のユーザー数は現在4万5000人ほどだが、今後、ユニークな活用事例が生まれればユーザー数は急増するだろう。来年以降、このPtoOの動向は大変興味深い。

実際に、パッケージデザインを活用して、オフラインとオンラインをつなげていくために重要なポイントは、オンラインメディアをプロモーションツールの一つではなく、商品の一部と捉えて企画を考えていくことだ。

例えば、血圧を計測する商品の本当の購入目的は、「血圧を測ること」ではなく「安定した血圧を保つこと」である。そのためには計測した血圧をもとに、その人への健康アドバイスがスマートフォンで定期的に届くといったサービス開発が求められる。

健康分野に関してはこういった取り組みがすでに始まっているが、「サービスの中にモノがある」という視点で自社の提供価値とその提供方法を再定義し、包括的にオンラインとオフラインを組み合わせたサービス開発をスタートさせた企業こそ、今後は大きな飛躍のチャンスを手にするのではないだろうか。

■プロフィール
小川 亮氏(おがわ・まこと)
慶應義塾大学卒業後、キッコーマンに入社、宣伝部・販促企画部・市場調査部に勤務。同社退社後、慶應義塾大学大学院ビジネススクールにてMBA取得。現在、パッケージデザイン会社のアイ・コーポレーション代表取締役。飲料、食品、化粧品などの商品企画やパッケージデザインを多数手掛ける。


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