【前回までのお話】
2011年4月、アジア進出に向けたプロジェクトが立ち上がり、いよいよASEAN各国への本格調査がスタート。山下さんはタイ、そしてインドネシアに飛びました。現地のPR会社、広告会社、日系企業、タイプレミアリーグのクラブチームなどを訪問する中で、Jリーグ幹部とともに、ASEANにおけるビジネスの可能性を再認識することができたという山下さん。2012年1月に「アジア戦略室」が設置され、いよいよ怒涛のアジア展開が始まります。>連載1回目 「20周年を迎えた、Jリーグ アジア戦略の仕事とは?」
>連載2回目 「アジアへの第一歩!Jリーグ、カンボジア&タイへの旅」
>連載3回目 「Jリーグ アジア進出プロジェクト本格始動!各国政財界の大物に会う」
ノウハウ、無料で提供します!
ASEAN諸国の現地調査から帰国し、2012年1月、いよいよ「アジア戦略室」が発足しました。その際に重視したのは、スピード。ASEAN各国の発展・成長のスピードを上回るくらいのスピード感を持ち、いろいろなことを仕掛けて実現していかないと、本来やりたいこと、やるべきことができなくなる。そう思い、メンバー全員がスピードを重視し、トライしていける環境をつくることを心がけました。
本格的なアジア展開をスタートするにあたり、まず考えたのが欧州との差別化でした。現在、欧州主要リーグの収入はJリーグの20倍以上。欧州と同じことをしていては、その差を縮め、成長していくことはできません。
そこで立てた戦略は、一般的に見たらあまりにも非常識なものだったかもしれません。と言うのも、唯一の売り物であるはずの「Jリーグが持っているノウハウ」を無料でASEAN各国へ提供するという戦略をとることにしたのです。もともとはそのノウハウを基に、コンサルティングをして利益を得るつもりだったのに、どういうことなのでしょうか?
現在、アジアから欧州の各国リーグには年間で総額2000億円近いお金が放送権料として支払われており、アジアと欧州の格差を、ほかならぬアジアのお金が生み出しているという歪んだ構図になっていました。
【欧州>>アジア】の構図を本気で【欧州<<アジア】に変えていくためには、同時多発的にアジア各国のサッカー界を発展させていき、欧州へ流れているサッカーマネーをアジアで還流させることがポイントになると考えました。
そこで、まずはアジアのサッカーマーケットを大きくさせ、それと同時にJリーグも成長していくような策をとることにしたのです。欧州は、「現在のアジアからいくら稼げるか」を考えているので、Jリーグは差別化のポイントとして「現在」のアジアから稼ぐのではなく、アジアを発展させ、共に成長していくという戦略をとることにしたのです。
≫次ページ 『各国リーグとの提携の狙いとは』に続く