ソーシャルデータは仮説を立てるためのヒント
渋谷 データ分析・活用に取り組む中で最も苦労するのが、確度の高い仮説を立てること。
これまでは、自社のビジネスに関する知識を豊富に持っている社内の人材が、社内のデータを活用して担うべきところと考えてきましたが、それだけではなかなか革新的なアイデアは生まれず、限界を感じ始めてもいます。
発想のための気づきを得るツールとしてソーシャルデータを活用するのは一つのアイデアかと思います。
永井 お客さまと話をしていても、自社のビジネスに関する知識を持っているからこそ、ネット上の発言からこれまでにない「ひらめき」「気づき」が得られるケースが多いようです。
今のトレンドを社内に取りこんでいくことで、精度の高い仮説を立て、お客さまのニーズにフィットした施策の展開につながるのだと思います。
齋藤 お客さまの直近の行動に基づく分析は、今後ますます重要になると思います。たとえばタイに旅行した方は、旅行中はもちろん、実は帰国後にもタイ料理が恋しくなることが考えられます。そのタイミングに、タイ料理の情報がメールマガジンで届いたら、地元のタイ料理店に行くという行動を喚起できるかもしれません。結果的に、その人の旅行全体の満足度も向上するのではないでしょうか。
日本航空さんであれば、JALマイレージバンクやJALカードなどの提携先の情報を提供することで、お客さまに喜ばれるコミュニケーションが実現できそうです。
渋谷 おっしゃる通りですね。旅行出発前のお客さま、旅行中のお客さまに対して、旅に役立つ情報をご提供するという発想はありましたが、「帰国後」にそうした情報を提供するという発想はありませんでした。
野口 社内からは業務知識があるからこそのアイデアを、社外からは豊富なデータ分析ノウハウがあるからこそのアイデアを持ち寄って仮説を立てることで、お客さまとの適切な距離感を大切にしながら、その時その時のお客さまにフィットする情報を提供できれば嬉しいですね。
渋谷 そうした取り組みを通じて、お客さまに「気が利いているね」と思っていただける企業をめざしたい。また、有意義なアイデアをスムーズに実現するために、今後は運用上の課題も解決していかねばと考えています。
齋藤 そこを技術面でお手伝いするのが、ITベンダーである我々の役割です。とは言え我々が提供すべきなのは、分析システムだけではないと考えています。我々のサービスは、全体の6割がシステム、3割がSEやコンサルタントによる分析サポート、そして残り1割がお客さまとともに個別具体的な分析・活用に取り組んでいくことです。
「気の利いたサービス」は、この残り1割の部分が可能にするもの。今日のお話を通して、RFP(提案依頼書)以上のものをお客さまと一緒になって見出し、作っていかねばならないという気持ちを新たにしました。
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