いずれの事例も言い訳だけがむなしく聞こえて残念だが、実際のところ企業側が本当に違法行為を真摯に受け止め、反省しているのか疑わしい点もある。
違法行為を取り締まる側も複雑で、わかりにくさという点での問題が残る。健康に危害が及ぶような賞味期限や消費期限の改ざんは厚生労働省の管轄(保健所が窓口)だが、産地偽装などの原材料表示については農水省の管轄(農政局が窓口)となる。また、「無添加」と表示しながら添加物が混入しているような優良誤認行為は品質表示の問題で消費者庁が管轄する。
さらに、食品衛生法の「規格基準」(注)では、成分、製造、加工、調理、保存に関する基準や規格が定められており、そのいずれも基準や規格に合致しなければ基準・規格外製品となり品質上全く問題がない製品でも回収対象となる。こちらも違反行為であり、保健所が窓口となっている。
このように食品のコンプライアンスの守備範囲は広く、専門家でも理解し尽くすのは難しいが、学習しようとする組織でなければ同じ過ちを繰り返し、また既に犯している違反行為にすら気がつかないものである。企業風土に密接な関係があるのは、このような「組織のあり方」「経営者の考え方」などの潜在的背景が存在するからである。
注) 規格基準とは食品衛生法第7条第1項および第10条に定められた、食品、添加物等の規格基準を指し、食品一般規格の成分規格、食品一般の製造、加工及び調理基準、食品一般の保存基準 を定めたもの。
製造委託先に製造を任せ、販売先が商品に表示されるOEMでは、購入者が製造元を確認できない。「食品偽装の温床」と一部のマスコミではこの制度を揶揄する者もいるが、何か事件が発生すれば、製造元、販売先ともに同じリスクを背負っていることに違いはない。
販売先は製造元が開示した内容をダブルチェックすることを前提に、取引先との「信頼関係」という一言で解決するのではなく、実質的な検証機能を付随させていくことが、消費者の安全確保の視点から不可欠な時代に入ったと言えるだろう。
また、同時に消費者個人が目に見える表示にごまかされることなく、品質上の知識を学び、消費者自身も食品偽装を決して見逃さないという、強い気持ちを持つことが食品業界を改善させる良い起爆剤となるに違いない。