滑らないためのリスクヘッジ
西村:あと、テレビとの連動では一人ひとりの視聴者が、主役になるような場所をつくりたいとも考えています。昨年、9月にTBSテレビとソーシャルメディアと連携した生番組「大炎上生テレビ オレにも言わせろ!」を放送しました。ツイッターからコメントや投票をすると、リアルタイムに番組の映像が変化し、さらに自分のコメントや名前が画面に出るという参加型番組です。
谷口:私は、時々「ニコ生」の企画もしますが、最近はユーザーのコメントにつっこめるタレントさんをキャスティングするようにしています。
西村:ちゃんと、視聴者いじりのできる人ですね。確かに、今は一般の人も自分のフェイスブックの投稿に、どれだけ「いいね!」がついたかを気にする時代ですからね。
バスキュールでも、ユニリーバさんの「AXE」の企画で「AXE脳科学研究所」という取組みを今年6月に行ったのですが、「ニコ生」で10時間の生放送をしたんですが、意外だったのは広告であっても面白ければ、ユーザーの皆さんは楽しんでくれるのだということ。
「ニコ生」を見ている方たちは、企業がスポンサードしているような企画は、あまり好きではないかなと思っていたんですが。
谷口:ユーザーは、広告かどうかは気にしてないと思います。面白ければ、結構温かく受け入れてもらえるなと。
西村:ただテレビ番組もニコ生もそうですが、参加型を標榜している企画は、本当にみんなが参加してくれるのか、直前までドキドキですよね。
ウェブコンテンツは、ローンチした後でも手直しができますが、生放送はその場勝負ですから、現場力が鍛えられている気がします。万一の事態を想定し、何か起きた場合のシナリオもつくったうえで放送に臨むようにしていますが、そういうシナリオをつくっている時は、すごい悲しい気持ちになります(笑)。
谷口:私の場合、スベるとバズらないので誰にも気づかれない。バズったものしか、認識されてないので、最初から広告主さんの期待値が上がってきてしまっているように感じます(笑)。
とはいえ広告なので、滑らないように、いろんな保険をかけてはいます。ある程度のリーチが見込める「ライブドアニュース」というプラットフォームに載せること、あとは連載形式で小さな玉をたくさん打つこと。滑ったとしてもファールくらいにはとどめる感じで、空振り三振みたいな完全なまでの滑り方はしないようにしています。貧乏くさい話ですが(笑)。
谷口:バスキュールさんはどんなふうにアイデア会議をしているんですか。
西村:普通にブレストしてるだけだと思いますが…。ただ、特徴があるとしたらアイデアの段階で、まずはモックをつくってみちゃうということはありますね。実際に触れられるモノがあると、デザイナーもプランナーもディベロッパーもユーザーの目線で、改善点などのアイデアが出てくるように思います。
谷口:バスキュールさんは、新しい技術を積極的に取り入れていますよね。そういう情報は、個人個人で勝手に集めているんですか。
西村:そうですね。皆が勝手に集めてます…。私たちは、常にこれまでになかった仕掛けや仕組みで見る人を驚かせたい、これまでになかった市場をつくっていきたいと思っているんです。なので、新しい技術もどんどん取り入れたい。新しい技術を吸収して次にいかないと「宇宙と未来のニューヒーロー」にはなれませんからね(笑)。
(本文中・敬称略)
バスキュール プロデューサー 西村真里子氏
最高峰のコミュニケーション企画力を武器に、チャレンジを続ける「バスキュール」の一員。IBM、Adobe、Grouponを経て現職。バスキュールの「視聴者が主役になる(マス×インタラクティブ)新エンターテイメント」の代表事例である「BLOODY TUBE」(2013年6月)、日本テレビ「JoinTVプロジェクト」、mixi Xmas「インタラクティブCM 小さなサンタクロース」などに関わる。