革新と新需要の創造 〜 キッコーマン「いつでも新鮮」の挑戦 〜
今秋、その特徴でわる「いつでも新鮮 やわらか密封ボトル」の生産が追いつかず、販売休止の商品が出るほどの人気となった「いつでも新鮮」シリーズ。キッコーマンの田嶋康正氏が、その開発背景と販売戦略を語った。
国内のしょうゆの購入量や世帯の構成人数は長期的に減少傾向にある。こうした人口動態予測から、「若年層をしょうゆ購入の流入世代と位置づけ、身近な調味料として消費を促すこと。
そして消費量の増加ばかりを追うのではなく、商品の付加価値をいかに高めていくかが課題だった」とたじま田嶋氏。
そこで、同社の開発方針「革新と新需要の創造」のもと、生活者の潜在的なニーズ・不満を解決するものづくりで需要を創出し、市場を活性化すべく取り組んだのが「生しょうゆ」の開発だ。
同社が持つ、醸造のみでしょうゆの旨味を高める技術を利用することで生み出される柔らかな塩味と穏やかな香り、そして火入れをせずに仕上げることで実現される美しい赤色といった、現代の嗜好にマッチするしょうゆを生みだした。
また容器については、酸化による色の変化と風味の劣化を消費者の潜在的な不満と捉えた。「これを解決することで、新たな価値創造を実現するチャンスがある」(田嶋氏)と考え、容器メーカーと共同で、密封機能を持つ二重構造の容器の開発を行った。
広告・販促施策については、「『いつでも新鮮シリーズ』の認知度を上げて、トライアルを喚起し、ご家庭で美味しさを実感していだだくことが課題」と田嶋氏。
テレビCMで紹介した旬の素材を活かしたメニューの開発と、広告、売り場、社内外のレシピサイトを連動させたメディアミックスのコミュニケーションを展開した。
同社サイト内のレシピ紹介ページ「レシピ ホームクッキング」と連動したスマホアプリ「今日の献立」に、同シリーズのバナーを掲載し、商品情報やおすすめレシピに誘導する仕組みを導入したほか、カタリナマーケティングジャパンが提供する「レジ・クーポン」を活用し、購買から7週間後に買い時を知らせるメッセージ付きクーポンの配布などを行った。
こうした取り組みが奏功し、効率の良いリピーター獲得につながっているという。
田嶋氏は「生活者、流通、当社がそれぞれのメリットを享受できるトリプルウィンの関係を目指すことで、しょうゆ市場の活性化・発展につなげたい」と話し、講演を締めくくった。