特別対談「マーケティング・コミュニケーションにおける新聞広告の役割」
スマートフォンの普及やデジタルテクノロジーの進化を背景に、人々を取り巻くメディア環境は大きな変化の最中にある。日々膨大な情報に晒される生活者のメディア接触行動が多様化する中、既存メディアの危機を指摘する声も少なくない。
今回の対談では、特に新聞メディアにフォーカス。ともすると過小評価されがちとなっている新聞の価値を見直し、広告メディアとしての新しい活用法を見出すことを目的に、旭化成 広報室長の山崎真人氏とパナソニック アドメディアセンター所長で日本アドバタイザーズ協会の新聞委員長でもある上川内利博氏が意見を交わした。
上川内氏は、「新聞は、記事だけでなく、広告も『ニュース』であるべき」と話し、自社の活用事例として2008年10月1日付の社名変更に際して出稿した企業広告を紹介した。こうした場面で新聞広告が活用される理由として、経営者層やビジネスマンといった読者層を持つ新聞の信頼性の高さを挙げ、「社名変更のような、企業としての大きな動きの告知は、新聞メディアの大きなパワーを有効に活かせる機会」と話した。
一方、山崎氏は「新聞は、情報の発信者と受信者が出会う『場』であり、発信者側にとってはブランドを築く上での重要なステージ」だと話した。
新聞の活用事例としては1997年にスタートした企業広告「イヒ」シリーズと、2007年から継続している、見開き30段と次ページ15段で展開する「昨日まで世界になかったものを。」シリーズを挙げた。
「昨日まで世界になかったものを。」シリーズ 見開き30段で、社会にあるさまざまな「問題」にスポットを当て、次ページ15段で、それに対する「答え」として旭化成の技術を紹介している。
また上川内氏は、「以前と比べて若年層に読まれなくなったとは言え、4700万部という発行部数を持つ新聞は、リーチメディアであることに変わりはない」と話し、同社の環境配慮型製品「エコナビ」シリーズのように、商品特性だけではなく、コンセプトやスタンスを世の中に伝えたい時には、新聞が大いに活用できるとした。
山崎氏は「新聞は、『情報を得たい』『知識を吸収したい』という意識を持つ人が読む、能動的なメディア」であると話し、情報の発信側と受信側の間に、メッセージの理解や共感、信頼を構築しやすいことが新聞の魅力だと語った。
さらに、有効な広告メディアであり続けるために、新聞に求められることについても言及した。上川内氏は、「新聞社が主体となり、新聞広告の効果を測定し、その情報を開示することで、生活者との直接接点を持たない企業や、新聞広告の活用に二の足を踏んでいる企業が、より広告を出しやすくなるのではないか」と提案。
山崎氏は、「新聞社内での情報共有の推進と、テレビやラジオといった他メディアと組み合わせたクロスメディア展開の提案。これが実現されれば、より使える、使いやすいメディアになるのでは」と話した。