Jリーグがアジアで人気者になるための3つの戦術

ASEANの主要テレビ局で放送スタート

テレビ放送については、現在のASEANではイングランドプレミアリーグの人気が絶大で、Jリーグのニーズはかなり低いと感じていました。そんな逆境の中、Jリーグの価値を見出してもらうため、そして放送してもらうために考えた訴求ポイントは2つ。

(1)プレミアリーグは欧州とアフリカの選手が大多数で、フィジカル的にASEANの選手が真似することはできない。しかしJリーグは、ASEANの人たちと同様のフィジカルの日本人がプレーしている、アジアでトップレベルのサッカー。それを、子どもを中心に多くの人に観てもらい、学んでもらうことで、ASEANのサッカーは確実に強くなる。
(2)時差の関係上、放送時間は現地の土日の昼間や夕方。欧州サッカーの放送時間とかぶらない。

このことを踏まえつつ、海外放送権を持つエージェントや現地のテレビ局などと交渉を続け、露出を拡大していきました。ちなみに、2012年のアジア戦略スタート以降に放送されるようになったASEAN及び周辺エリアのテレビ局は次のとおりです。

■ベトナム:VTVcab(国営放送)、VTC、VFM
■タイ:GMM GRAMMY、true(カップ戦)
■ミャンマー:SKY NET
■フィリピン:ABS-CBN(地上波)
■香港:icable
■台湾:PTS(地上波公共放送)

タイのテレビ局・GMM GRAMMYでのテレビ放送開始を発表した会見の様子。会見には、多くのゲストやメディアが訪れた。

以前から放送していたシンガポールのStar Hub、マレーシアのAstroなどを含め、ASEANの主要な局でJリーグの試合が放送されるようになってきました。これらの局からは、基本的に放送権料をいただきながら放送してもらっています。ただ、現状では欧州サッカーとの人気の差がまだ大きいので、放送権料を高く設定するのは難しい。まずは、スポンサーにとってのJリーグの価値を向上させ、スポンサーを獲得することで収益を上げることをファーストステップと考えました。

現地での直接コミュニケーション

カンボジアでのサッカークリニックの様子。現地の子どもと、現地在住の日本人の子どもをミックスして実施した。


U-13 Jリーグ選抜がタイに遠征し、現地のクラブと試合を行った。

テレビで放送するだけでなく、サッカークリニック、U-13といった子ども世代の交流試合、指導者講習会などを現地で実施し、ASEAN各国のサッカーのレベルのアップを促進する活動も行っています。日本サッカーが成長してきた主な要因としては、選手の育成を体系的に、根気強く、そして戦略的に進めてきたことが大きい。そこで得たノウハウを、ASEAN各国に伝えています。

そして3つ目の、ASEANのスター選手の獲得。やはりASEAN各国からJリーグへの注目を集め、テレビ放送を観てもらうためには、その国のスター選手がJクラブに所属していることが重要です。そこで、露出拡大と現地での活動を展開しながら、JクラブにASEANのスター選手が加入するためのサポートを行っていきました。そしてそれが実現した後に待っていたのは、予想をはるかに超えた世界だったのです。こちらについては、次回で詳しく書きたいと思います。

(つづく)

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山下 修作(Jリーグメディアプロモーション アジア室)
山下 修作(Jリーグメディアプロモーション アジア室)

北海道大学院卒。リクルートにて営業、編集、マーケティング、web事業などに従事。2005年よりJリーグ公認ファンサイト「J’s GOAL」等の運営に携わり、JリーグのWEB事業やプロモーションに携わる。2012年アジア戦略室(現アジア室)発足に伴い本格的にJリーグのアジア展開に携わりアジアを奔走中。

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山下 修作(Jリーグメディアプロモーション アジア室)

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