一方、相方の石田明さんは「僕はその逆で、結構“素”のまんまなんです」と一言。「実は自分の見せ方とかキャラはあんまり考えてなくて。メディアに向けても、特に“こうしよう”とか相方(井上さん)ほどは考えていないですね」。
企業の記者発表会などにゲストとして招かれることも多い彼らだが、心がけているのは「誰ひとり笑わないものと思って舞台に立つこと」と井上さん。「若い頃は記者会見もお笑いの舞台と同じように捉えていて、笑わせなきゃいけないと思っていました。それこそ、ドリームが掴める場くらいに考えていたのですが、そういう場ではないんだなって、このキャリアになって分かるようになりました」。
その一方で、「頑張るためのエンジンを積む場」との発言も。「(どのゲストも)ああいう場では制約を同じように受けているし、先輩たちを見ているとその中で現場をちゃんと面白くしている。それから、記者会見になると、本当に面白い部分でしか皆笑わないということもあるので、いろんな意味で勉強になります。そういう意味で、自分たちはまだまだだなって勉強する場でもありますね」。
それと同時に、特に発言に注意しなければいけない場としても捉える。「たとえば、あくまで現場の空気づくりとして、一緒にゲストとして出ているタレントのスキャンダルをノリでいじったりすると、翌朝の情報番組のオンエアやスポーツ紙紙面では、一切(記者会見の)商品には触れずにスキャンダルネタだけが報道されたり、ということも。
数々の負のランキングを総なめにしながらも、ポジティブでキザなセリフをつぶやく井上さんのツイッター。フォロワー数は24万人超。ツイッターをやめる芸人も多い中「おれは、何があっても、Twitterはやめない!!みんなと繋がっていたいから。誹謗中傷悪口炎上、どんとこい(^_^)v」とのツイートも。
こちらとしては暗黙の了解として“カットしてよ”っていう気持ちで言うことが、メインとして扱われたりするので、そういう時にはやっぱりメディアって怖いなって思います」。“良い意味でも、悪い意味でもモラリズムが問われる場”とも表現する中で、「僕らのモラルは“この発言は使わないでね”っていうモラル、メディアのモラルは“読者や視聴者の関心を惹くネタ取りというモラル”、そこのせめぎ合いですね」。
スキャンダルで知った怖さ
石田さんは、昔スキャンダルを抜かれた直後の記者会見でメディアの怖さを実感したという。「よりにもよって、スキャンダルが報じられた翌日に記者会見があって。事務所側からも、“絶対聞かれるから、うまくかわして宣伝をきちんとするように”と釘を刺されていたんです。でも、質疑応答になった時、誰も手を挙げなくて。マジで?と思っているうちに時間が来て会見は終了。
ほっと胸をなでおろして、舞台からはけている時にバーッとメディアが詰めかけて、怒涛のようにスキャンダルについて質問してきた。無事に終わったと思って安心していたものだから、用意されていたことも何も言えずで、完全に負けましたね。あれにはびっくり、本当にあせりました」。
また、張り込み記者にずっと監視されていたという経験も。「1カ月くらいマンションの下で掃除している人がいて、てっきり近所の人かと思ったら張り込み記者だった。ある時、張り込みらしきカメラマンが突撃してきて慌てている時に、その人が“どうしましたか?”って来て。“いや、ちょっと急にカメラ向けられて”って話すと、カメラマンより先に“記者です”って名刺を渡してきた。
しかも、当時付き合っていた彼女の写真を何千枚と撮っていて、“載せるから、好きなやつ選んでいいよ”って言うんです。怖いな〜と思いました」。
井上さんも「芸能記者とたまたま(飲み屋などで)居合わせたら、言葉には気を付けます」と発言。「やっぱり芸能記者は怖いので、自分からは誘いません。酔った勢いでぽろっと言ってしまうこともありそうですし……」。
「プライベートでもいろんな先輩と飲みに行って、しゃべるスピードに慣れるようにしている」という井上さん。一方、「キャラとか見え方は、そこまで気にしていない」という石田さんのブログでは、アットホームな生活ぶりが綴られている。
宣伝・広報担当をはじめ、企業側と仕事をする機会も多い中で、どんな人が仕事しやすいか、という質問には、2人揃って「ウィキペディアを読んできました、と言ってくれる人」とずばり。「正直、コンビを組んだきっかけとか何万回といろんなところでしゃべっていますし、それを聞かれた時点で“またこれか”とやる気がなくなります(笑)。
見てきたんだけど、もう一回聞いていいですか? って言ってくれる方が気持ちがいい」。また、「業務的じゃない」こともモチベーションが上がるポイント。「例えば学園祭などでも、黒板に一言“来ていただいてありがとうございます”と書かれていたりすると“ちょっと力を入れて頑張ろう”という気持ちになる。結局、そういうところが大事だなと思いますね」(井上さん)。