『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』刊行記念特別対談③ サントリー食品インターナショナル北川廣一宣伝部長×福里真一「宇宙人ジョーンズは、なぜ生まれたか?」(1)

CMプランナー福里真一さんの著書『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』が刊行になったのを記念し、特別対談を開催。対談のお相手3人目は、サントリー食品インターナショナル宣伝部長の北川廣一さん。11月20日開催「宣伝会議サミット2013」で行われた二人の対談の模様を紹介します。


【連載】「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」――福里真一
1、はじめに
2、第1回「電信柱の陰からおずおずと語りはじめる」
3、第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(1)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(2)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(3)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(1)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(2)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(3)

サントリー食品インターナショナル宣伝部長
北川廣一氏
 ×
CMプランナー
福里真一氏(『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』著者)

オリエンで言われた2つのこと

福里:私と北川さんは、サントリーさんの缶コーヒー「BOSS」のテレビCM、「宇宙人ジョーンズ」シリーズで、それぞれプランナーと宣伝部長という立場で、ずっとご一緒している関係にあります。

このシリーズが始まったのが2006年の4月。最初に企画を提案した相手がまさに北川さんで、つまりはこの企画を選んだ方です。これまでの8年で北川さんが他の部門に異動されていた時期もあったのですが、今はまたサントリー食品の宣伝部長としてこの企画を担当されています。

北川:福里さんに最初にお会いしたのは、06年の年初でしたね。「BOSS」はサントリーの飲料の中で一番大事なブランドです。

今年で21年目を迎えますが、常に前年の売上数値を超え続けていて万一、前年を超えられなかったら社内で「戦犯宣伝部長」と言われてしまうので(笑)、CMにもとても力を入れています。

福里:最初のオリエンテーションで北川さんに言われたことは、たった2つしかなかったと記憶しています。「BOSS」は「働く男の相棒」であるということを描きたい。そして、缶コーヒーは飲むとちょっと元気になれる飲み物だから、CMも見た人がちょっと元気になるようなものにしたいという2つでした。

北川:「BOSS」のコンセプトは「働く男の相棒」です。汗をかき、上司に怒られながら仕事をし、ちょっとした休憩時間に飲んでもらってホッと一息ついてもらいたい。なのでCMでは「辛いことも多い世の中だけど、決して捨てたもんじゃないよ」ということをうまく描いてほしいなと思っていました。

福里:サントリーさんのオリエンテーションは、いつもとてもシンプルなんです。通常、クライアントさんからは「CMで言いたいこと」がたくさんでてくるものなのに、この「BOSS」のオリエンテーションもすごくシンプルで驚いた記憶があります。

北川:私たちはCMとはお客様に対するラブレターだと思っているんです。そして、いつも告白したい相手は決まっている。

「BOSS」で言えば1日に2本も3本も缶コーヒーを飲まれる方で、辛いことも多い毎日の中で、小さな幸せを見つけて頑張っている人たちです。クリエイターの方に「こんなお客様にラブレターを送ってほしい」とお願いするのがオリエンテーションだと思っています。

ラブレターは届け方が大事で、「君のことが大好きだ―!!」と絶叫されたり、しつこく「僕ってこんなに素敵なんだよ」と言われたりすると、ひかれてしまいす。

ここに、いらっしゃる「電信柱の陰から見てるタイプ」の方は毎回、電信柱の陰から人をギロっと観察して、心の機微に触れるような最高のラブレターを書いて届けてくれるなと思っています。

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福里真一(ふくさと・しんいち)ワンスカイ CMプランナー・コピーライター
1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業。92年電通入社。01年よりワンスカイ所属。いままでに1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、吉本総出演で話題になったジョージア「明日があるさ」、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、トミー・リー・ジョーンズ主演によるサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」など。その暗い性格からは想像がつかない、親しみのわくCMを、数多くつくりだしている。

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