『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』刊行記念特別対談③ サントリー食品インターナショナル北川廣一宣伝部長×福里真一「宇宙人ジョーンズは、なぜ生まれたか?」(1)

提案した瞬間に、ほぼ即断

福里:2人で褒め合う感じになっていて、会場の皆さんすいません…(笑)。06年に最初のプレゼンを聞いた時、どんな風に思いましたか。聞くのは、ちょっと怖い気もするのですが。

北川:サントリー食品では企画の決定に際し、宣伝部長がプレゼンの場で決めることができる権限をもらっています。ですからクリエイターの方と直接、お話しして、その場で疑問点を聞きつつ、決めることができる。「宇宙人ジョーンズ」の時も、決断は早かったと思います。

福里:提案し終わった瞬間にすでに、北川さんが「これいいよ」という感じになっていて、とても嬉しかったのですが、実は僕らは2つの企画を提案していて、「宇宙人ジョーンズ」ではない方の企画が選ばれるのではないかと思っていたんです。

某クリエイティブ・ディレクターの佐々木宏という人がいるのですが「『ジョーンズ』は面白いけど、ちょっとひねりが効きすぎではないか」と。なので、プレゼンの直前まで佐々木さんの指示で、もう1案のほうを練り直し続けていたんです。

即断していただいてうれしかった反面、「佐々木さん、こっちだったじゃないですか!」という気持ちにもなりました(笑)。

北川:本来であれば、4月から始まるCMでしたら前年の秋くらいには企画が固まっていないといけなかったんです。

でも新しい企画に悩んでいて、予定調和でないCMにしたいと思っていたところ、「宇宙人ジョーンズ」の企画を提案していただいたので、即「これだ!」と。

福里:それまでの「BOSS」のCMには矢沢永吉さん、浜崎あゆみさん、SMAPさんとその時々の人気者が登場していました。

そのCMに、決してタレント人気ランキングで上位に登場することはないであろう、トミー・リー・ジョーンズさんを起用することにためらいはなかったのでしょうか。

北川:タレントさんは広告のメッセンジャーですし、ブランドの世界観を体現する存在なので、とても大事にしています。

ちょっと元気をなくしている、疲れている人たちに励ましを与えてほしいという時に、地球人を冷ややかに見る宇宙人の目線が、ちょっと間接的なメッセージの届け方で、「新種のラブレター」という気がしました。なので、宇宙人役としてトミー・リー・ジョーンズさんを起用するのは企画にもぴったりだと思いました。

<次回(12/20更新)に続く>

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福里真一(ふくさと・しんいち)ワンスカイ CMプランナー・コピーライター
1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業。92年電通入社。01年よりワンスカイ所属。いままでに1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、吉本総出演で話題になったジョージア「明日があるさ」、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、トミー・リー・ジョーンズ主演によるサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」など。その暗い性格からは想像がつかない、親しみのわくCMを、数多くつくりだしている。



【連載】「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」――福里真一
1、はじめに
2、第1回「電信柱の陰からおずおずと語りはじめる」
3、第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(1)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(2)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(3)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(1)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(2)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(3)

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