今回は前々回から続く、「一番搾りフローズン<生>」のブランディングから「一番搾りフローズンガーデン」開店までのお話の最終回です。
前回までの2回のコラムで説明した、「一番搾りフローズンガーデン」での体験デザイン設計など、僕たちが目指した新しいビール体験も完成に近づいてきました。次に必要なのがこの体験にどのようなデザインを纏わせるか。今回は、この点についてお話をしたいと思います。
一番搾りフローズン<生>が目指したのは、「飲む」に「撮る」を加え、ビールから離れていた若者が楽しめるビール体験を創造することです。
これを実現するために、「一番搾りフローズンガーデン」のデザインアプローチは、①若者に向けた空間デザインのトーン&マナー、②若者の“撮る”行動を促すデザイン、③コミュニケーションを活性化する場の形態、の3つとしました。これは、若者がSNSで写真をシェアする行動を分解したものです。この3点について、それぞれ解説していきます。
1.若者にむけた空間デザインのトーン&マナー
白とナチュラルウッドをベースに、アクセントで黒を利用。ポイントで店内に緑を配置し、カフェの様な空間デザインを取り入れました。ビアガーデンに、カフェのトレンドデザインを取り入れることで、若者に向けた場所であるということを発信しました。
2.若者の“撮る”行動を促すデザイン
若者は、SNSでシェアするネタ(被写体)を探しています。もちろん「一番搾りフローズン<生>」の外観もそうですし、皆で盛り上がっているシーンもシェアの対象になります。そういったシェアを活発に生み出すために、若者に“撮影モード”に入ってもらうことが必要です。
そこで「一番搾りフローズンガーデン」には、若者の“写真心”をくすぐる、様々な仕掛けがあります。来場した時に目を引く泡の形状のサイン、そしてビールの外観、泡のシルエットが飛び出たコースターや、ゆらゆらとゆれる泡型の卓上POP。こういった泡をモチーフにした可愛らしいデザインが若者に受け、一緒に写真を撮り、SNS上でのシェアを生み出しました。
3.来場者が仲間と楽しい時間を過ごせる場の形態
「一番搾りフローズンガーデン」の空間で特徴的なデザインの一つが、店内と店外をくねくねと繋ぐコミュニケーションカウンターと呼ばれるテーブルです。このテーブルの幅は意図的に48cmに設計しました。建築計画上、0〜45cmを「密接距離」と言い、45cm〜90cmを「個人距離」と言います。密接距離とは、恋人の様に親密な関係にある人と共有する距離で、個人距離は友人等と共有する距離です。
「一番搾りフローズンガーデン」では、この2つの距離の境界値で来場者が時間を過ごせるようにデザインされています。もともと知り合い程度だった人とはさらに仲良くなり、仲の良かった人たちとはさらにもっと仲良くなれる…。そんな場が生まれることを目指しました。
さらに、椅子をベンチ形式で繋げているため、隣り合った違うグループとも一緒に座っている感覚になり、連帯感が生まれます。こういったコミュニティの連鎖が、店内、店外へと繋がり、賑わいが街にまで広がっていくイメージで空間デザインを行いました。
あえて48センチの幅にしたテーブル「コミュニケーションカウンター」は「一番搾りフローズンガーデン」のデザイン上の特徴になっていると同時に、その場でどんな時間を過ごしてほしいかという、思いも込められている。
こうして「一番搾りフローズン<生>」は、商品だけではなく、それを取り巻く全ての施策やシーンも含めて若者に向けた新しいビール文脈へと向かっていきました。「一番搾りフローズン<生>」という、キャッチ力の強い商品と、他にない体験が合わさることで、強いブランドが生まれるということを感じて頂けましたでしょうか。
各施策の写真をもっと見たいという方はこちらにある、「KIRIN FROZEN」のページをご参照ください。