【連載】「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」――福里真一
1、はじめに
2、第1回「電信柱の陰からおずおずと語りはじめる」
3、第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(1)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(2)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(3)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(1)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(2)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(3)
特別対談「宇宙人ジョーンズは、なぜ生まれたか?」(1)
サントリー食品インターナショナル宣伝部長
北川廣一氏
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CMプランナー
福里真一氏(『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』著者)
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06年の春、新シリーズ開始
福里:「BOSS」は数々のヒットCMを送り出してきたブランドなので、クリエイターとしてプレッシャーもありました。ところが、新CMのオンエアが始まった当時、反響がなく、これは困ったことになったな…と思っていました。
いま冷静に考えると、次々と人気者が登場していたCMに突然、皆が知っているわけでもないハリウッド俳優が登場した。あの宇宙人は、トミー・リー・ジョーンズという俳優さんなのだと認識している人は少なく、当時はロッテのバレンタイン監督だと思っている人も多かったようです。顔が微妙に似ているんですよね。
ネットでも「バレンタイン、なんでシーズン中にCMにでているんだよ!」という書き込みも見受けられまして…。宇宙人が地球調査をしているというフレームも、すぐに飲みこめないものだったのかなと思います。その後、秋からの新CM(「宅配便」篇、「カラオケ」篇)で流れが変わって人気が出てきました。
北川:「宅配便」篇は、当時駐車違反が厳しくなった時で、時事ネタということで話題になりました。
福里:シリーズでCMをつくる良さは、時事ネタを取り入れられることですよね。
北川:八代亜紀さんの「舟唄」を聞いて、ジョーンズが涙を流す「カラオケ」篇もすごく人気になりました。このシリーズの根っこにあるのは演歌、浪花節の世界なんだということを認識することになった、記憶に残っているCMです。
福里:ジョーンズは「このろくでもない、すばらしき世界。」というコピーでもわかる通り、否定しながらも、でもちょっとずつ地球人のことを好きになっていく。
すぐに好きになるのではなく、じっくり好きになっていくということを大事にしています。シリーズが始まって半年たって、ジョーンズが八代亜紀さんを好きになることで、「この宇宙人、悪い人ではなさそうだ」と思ってもらえて、受け入れてもらえるようになったのかなと思います。
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1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業。92年電通入社。01年よりワンスカイ所属。いままでに1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、吉本総出演で話題になったジョージア「明日があるさ」、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、トミー・リー・ジョーンズ主演によるサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」など。その暗い性格からは想像がつかない、親しみのわくCMを、数多くつくりだしている。