『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』刊行記念特別対談③ サントリー食品インターナショナル北川廣一宣伝部長×福里真一「宇宙人ジョーンズは、なぜ生まれたか?」(2)

電信柱の陰から見てるタイプの企画術

2人の対談は、11月20日開催の「宣伝会議サミット2013」にて特別企画として実施された。

福里:ということで、「宇宙人ジョーンズ」は8年やってきまして、これまでで47タイプつくってきたのですが、最後にそれぞれ一番好きなCMを選び合いました。北川さんが選んだのが元小結・高見盛が出演した「大相撲」篇。

北川:「勝ち負けなんて関係ないよ」と言う人もいますが、でも人間は絶対勝ちたい生き物だと思うんです。でもすべての人が勝てるわけではない。そこに「この惑星には、愛されるという勝ち方もある。」という提案が、福里さんのイメージとは違うロマンチックな切り口で、「BOSS」の新たな局面を切り開けたかな、と。

福里:私自身は、憎まれながら生きていますので、その勝ち方はできないですが、コピーだけなら書けますので…。私が選んだCMは「人類史」篇です。世の中、みんなが頑張るので、私までがんばらなければいけなくなっているな…。

なんで人間って、こんなに頑張ってしまうんだろう、という思いをそのままCMにしたという。こう考えると「宇宙人ジョーンズ」シリーズは、みんなが普通に思っていることを入れやすい仕組みですよね。

そういうことを普通にモノローグで語ると恥ずかしかったり、甘くなりすぎたりしてしまいますが、宇宙人が語るという設定にしたことで、長く続けられたのかなと思います。

最後に、さりげなく…。私がそんな「BOSS」CMをどんな風に企画しているのか、この「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」という本に書いてあるんですね。最近、私が書いた本なのですが、この対談は、サントリー食品の宣伝部長さんを販促に利用しているという側面もありまして(笑)。

北川:いえ、今日のメインテーマでございますので(笑)。福里さんの本、タイトルには「企画術」と書いてありますが、何かメソッドのようなものが書かれているわけではないです。この本を読んで「広告のプランナーになろう」と思う人にとっては、役に立ちません。

福里:北川さん、ちょっと断言しすぎでは…(笑)。

北川:ぼやきだったり、すごいことを提案しながら、そのことに照れていたり、自虐的なネタだったり…。8割くらいは福里さんの頭の中にあることが書かれている自叙伝的な内容なのですが「こんな風に、ものごとを考えているんだ!」という視点が面白いし、参考になります。

しかも「電信柱」っていい場所だと思いました。電信柱の陰から人を観察するという視点をうまく、広告の企画に活かしていることが分かりました。自分は暗いとか地味だと思っている人でも、成功ができる!という意味でも読んで元気になれると思います。

福里:最後は、自己啓発セミナーみたいな。なにか、怪しげな壺を売ろうとしている人たちみたいになっていますが…。北川さん、今日はありがとうございました。

――ありがとうございました。

(本文中・敬称略)

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福里真一(ふくさと・しんいち)ワンスカイ CMプランナー・コピーライター
1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業。92年電通入社。01年よりワンスカイ所属。いままでに1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、吉本総出演で話題になったジョージア「明日があるさ」、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、トミー・リー・ジョーンズ主演によるサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」など。その暗い性格からは想像がつかない、親しみのわくCMを、数多くつくりだしている。



【連載】「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」――福里真一
1、はじめに
2、第1回「電信柱の陰からおずおずと語りはじめる」
3、第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(1)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(2)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(3)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(1)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(2)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(3)
特別対談「宇宙人ジョーンズは、なぜ生まれたか?」(1)

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