工学部機械工学科卒業という経歴を持ち、現在は電通で「コミュニケーション・プランナー」として、これまでにない新しい企業コミュニケーションの形を模索する廣田周作さんもその一人。2013年7月には著書『SHARED VISION―相手を大切にすることからはじめるコミュニケーション』を刊行するなど、企業と消費者がフラットにつながる今の時代のコミュニケーションのあり方を自身の実践をもとに発信しています。
この連載では毎回、廣田さんが広告業界に限らず、そんな新しい働き方を見つけ、実践する方に話を聞きに行きます。
対談企画「仕事の創り方を変えよう!」
takram design engineering 代表
田川欣哉氏
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電通 プラットフォーム・ビジネス局 開発部 コミュニケーション・プランナー
廣田周作氏(『SHARED VISION―相手を大切にすることからはじめるコミュニケーション』著者)
なぜ、プロトタイプ思考がいま注目されているのか?
廣田:最近、分業化の流れへの反動なのか、ものづくりの現場でスモールチームで、どんどんプロトタイプを作り、デザインの精度を上げていくというアプローチが見直されていると思います。takramさんでもそういった、ラピッドにものをつくっていくアプローチをとるんでしょうか。
田川:はい。そうですね。最近、プロトタイプ思考になってきている理由は、いくつかあると思いますが、おそらく80年代くらいまでのプロダクトは、ある程度競争軸がはっきりしていた。
つまりはプロダクトを構成する要素がほぼハードウェアだけだったので、企業が選べる選択肢が今ほど多様ではありませんでした。ところが先ほど「5要素」の話をしたように、今はプロダクトの企画を考えていく際に、選べる選択肢が広がりすぎ、何が正解か見えなくなってきてしまった。以前であれば、過去の延長線上で「少し先の未来」をかなり正確に描くことができたと思うんですが、それができなくなってきている。
廣田:広告の世界でも、全く同じことが起きています。昔であれば、皆が注目する良い広告枠は決まっていて、そこを押さえ、優秀なクリエ―ター、人気のタレントさんを起用して広告をつくり流せば、ある程度の認知や共感は獲得できたのですが、それが複雑化してきています。
田川:情報の伝播手段が限られていた過去と違い、ソーシャル時代の現在は情報伝搬のパターンが複雑化しています。つまりは一般化ができない時代と言えます。
そして、一般化できない問題を解くための唯一の手法はインプットの回数を増やす、そしてインプット後のチューニングをこまめにやることしかありません。グーグルやアマゾンが、短期間で成長できたのも、サービスの質を高めるための仮説検証とフィードバックのスピードが格段に速いことが理由だと思います。
【「電通 廣田さんの対談」連載バックナンバー】
■takram design engineeringの田川欣哉さんに聞きに行く
・「自分で全部やってみたい人の仕事術」(前編)
・「自分で全部やってみたい人の仕事術」(後編)
■Sumallyの山本憲資さんに聞きに行く
・「リスクテイクする覚悟がある人の仕事術(前編)
・「リスクテイクする覚悟がある人の仕事術(後編)
■内沼晋太郎さんに聞きに行く
・「マージナルな場に飛び出す人の仕事術」(前編)
・「マージナルな場に飛び出す人の仕事術」(後編)※3月更新予定