体験デザインにイノベーションの未来を探る

オリジナリティの高いブランド体験を構築することが新しい事業開発、またはブランドを差別化するうえで重要であると、ここまでのコラムでご理解いただけたと思います。

体験のデザインとは狭義で言うと、店舗やホテル、エアライン等、空間を介した物理的実体験を伴うブランドが対象になりますが、広義で言うと、商品開発や事業開発のプロセスも対象になります。

そもそも世の中の消費は「モノ消費」ではなく、「コト(体験)消費」で大半が構成されています。

家で眺めるためだけに車を購入する場合は「モノ消費」と言えるかもしれませんが、顧客が購入しているのは、車(モノ)ではなく、車を介して得られる行動範囲の拡張、選択肢の多様化、ドライブを通して得られる楽しい時間、つまり、人生を豊かにする「コト(体験)」です。

これらの「コト(体験)」を購入することを消費の目的とすると、車を所有する必要はなく、レンタルで十分と言えます。もちろん購入することで所有欲や体験のカスタマイズ、レンタルでは得られない利便性を満たすことができますが、安く「コト(体験)」を購入できるレンタルと比較すると、今の時代においては大きな出費と言えるかもしれません。

レンタカーやカーシェアリングは、車を介して得られる体験を時間単位で商品化したものと言えます。顧客の価値観は所有からレンタル、シェアへと向かっています。これは時代の変化に伴う自然な流れであり、メーカーが消費者の価値観を再び所有へと動かすことは難しいでしょう。

ならばメーカーはモノを作り売る、というビジネスから、モノの体験の仕組みの商品化まで踏み込む、カスタマーエクスペリエンスの構築に踏み出すことが必要ではないかと思います。

次ページ デザイナーに求められる「わくわくする商品体験の仕組み」に続く

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室井 淳司(アーキセプトシティ 代表/エクスペリエンスアーキテクト)
室井 淳司(アーキセプトシティ 代表/エクスペリエンスアーキテクト)

1975年広島県生まれ。2000年東京理科大学理工学部建築学科(建築意匠専攻)卒業後、博報堂入社。空間開発チームに所属し、企業空間・店舗ブランディング、商品開発、プロダクトデザイン、体験コミュニケーションクリエイティブ業務に従事。2007年空間ブランディングを実行する社内組織、「博報堂エクスペリエンスデザイン」を発足。 2009年ミラノサローネサテリテ参加。2011年金沢美術工芸大学非常勤講師。 2012年博報堂史上初めて、広告制作職外からクリエイティブディレクターに当時現職最年少で就任。 2013年博報堂を退職し、空間クリエイティブ・デザインファーム、アーキセプトシティ設立。2013年4月より博報堂最年少フェロー。表参道布団店 チーフクリエイティブオフィサー。

Red dot design award best of the best 2011/JCD best100 2011.2012/DDA award 2008.2009.2010.2011、Good design award 2009.2011.
デザインと仕組みのかけ算で、デザイナーが担うべき役割を広げる。

室井 淳司(アーキセプトシティ 代表/エクスペリエンスアーキテクト)

1975年広島県生まれ。2000年東京理科大学理工学部建築学科(建築意匠専攻)卒業後、博報堂入社。空間開発チームに所属し、企業空間・店舗ブランディング、商品開発、プロダクトデザイン、体験コミュニケーションクリエイティブ業務に従事。2007年空間ブランディングを実行する社内組織、「博報堂エクスペリエンスデザイン」を発足。 2009年ミラノサローネサテリテ参加。2011年金沢美術工芸大学非常勤講師。 2012年博報堂史上初めて、広告制作職外からクリエイティブディレクターに当時現職最年少で就任。 2013年博報堂を退職し、空間クリエイティブ・デザインファーム、アーキセプトシティ設立。2013年4月より博報堂最年少フェロー。表参道布団店 チーフクリエイティブオフィサー。

Red dot design award best of the best 2011/JCD best100 2011.2012/DDA award 2008.2009.2010.2011、Good design award 2009.2011.
デザインと仕組みのかけ算で、デザイナーが担うべき役割を広げる。

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