境治さんに聞きに行く!「広告とコンテンツ融合の可能性」(後編)

CM制作にお金がかけられなくなった時代

境:スマホで見られることを想定してコンテンツをコンパクトにしているという話も面白かったです。最初は動画もつくっていたけれど、今はGIFで表現するようになった話とか。

谷口:ユーザーは時間を取られることを警戒しますよね。なので、伝えたい内容をより早く伝える方法を考えて選んでいるという感じです。

境:谷口さんはコンテンツを制作する際、映像系の制作プロダクションと仕事するケースはありますか。映像の制作会社だと、コストとの見合いとか、難しかったりしますか。

谷口:そうですね。編プロやウェブに強いライターさんと一緒に仕事をするケースがおおいです。あと、私はローコストでコンテンツを大量生産していくという方向性を目指しているので。ネットではあまりコンテンツにお金をかけられない。でも一つひとつのコンテンツにはお金をかけられないけれど、複数回にわたり連載していくとか・・。量を増やしていく方がみんなのためになるかなと思っています。

境:テレビCMの場合、1本制作するのに数千万円の費用がかかったりしますが、リーマンショック以降、その制作費が場合によっては、それまでの半分くらいになる状況もあって。

そこで皆でものすごく工夫してやりようを考えるんですよね。例えば現場で動くスタッフの人数が減っている。カメラマンが照明を兼ねたりとか。それまでの撮影現場って40~50人くらいのスタッフがいたんです。

それは、たとえば食材を整えるプロとか、湯気を立てるプロとか、一つひとつの作業に超プロフェッショナルがいて、そういうプロが結集して1本のCMをつくっていたからなのですが。撮影もフィルムでなく、デジタル一眼で動画を撮ったりして・・。

そうやってコストを削減しても素人にはクオリティの違いはほとんどわからないやり方を苦心して見いだしているのですね。やってみたらできちゃうので、痛しかゆしというか。

では、なぜ今まで数千万円をかけられていたのか。一つにはメディア費の約1割が制作費というぼんやりとした商習慣があったから。だからこそリーマンショックでメディア費が削られたら、制作費も削られてしまったわけですが。

そしてメディア費の1割がたとえば3000万円だったら、とにかくCMは3000万円でつくるものという習慣になっていたんだと思います。その3000万円が半分の1500万円になると、撮影の現場で頑張ってきた、職人的な人にとっては残念なことではありますが、プロフェッショナルなパートを少しずつ削っていく。CMは、その制作費に見合うお金や時間のかけ方をしていたということもあったのではないかと思います。

谷口:なるほど。逆に私は、すでにあるシステムからコストダウンするのではなく、ゼロからスマホ用のコンテンツをつくるというアプローチでコンテンツ制作のローコスト化を図ろうと考えています。

次ページ 『ネットから育つ新しい広告とコンテンツの関係』に続く

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谷口 マサト[LINE 広告事業部 チーフプロデューサー]
谷口 マサト[LINE 広告事業部 チーフプロデューサー]

72年滋賀生まれ。LINE株式会社 広告事業部 チーフプロデューサー。
横浜国立大学の建築学科を卒業後、建築業界には進まず、空手修行のため渡米、主にヌンチャクを学ぶ。空手のテキサス州大会と柔術の大会で優勝した後、帰国するもヌンチャクでは食えず、96年にいち早くネット業界に入る。
制作会社を経て外資系のIT系コンサル会社へ。当時日本で数少ないIA(情報設計)の専門家として、大手コマースサイトのリニューアルを多数担当後、ライブドアへ。現在はLINE株式会社にて、企業とのタイアップ広告企画を担当する。

一方で、運営する個人サイト「chakuwiki/借力」は累計4億2千万PVでベストブログ・オブ・イヤー賞(エンタメ部門)など受賞多数。サイトから発展した『バカ日本地図』などの書籍を宝島社などから6冊出版している。

Blog: http://blog.chakuriki.net/
Facebook: https://www.facebook.com/masato.taniguchi.5
Twitter: http://twitter.com/chakuriki

本コラムは連載【「広告なのにシェアされる」コンテンツ・マーケティング入門】の続編となります。

谷口 マサト[LINE 広告事業部 チーフプロデューサー]

72年滋賀生まれ。LINE株式会社 広告事業部 チーフプロデューサー。
横浜国立大学の建築学科を卒業後、建築業界には進まず、空手修行のため渡米、主にヌンチャクを学ぶ。空手のテキサス州大会と柔術の大会で優勝した後、帰国するもヌンチャクでは食えず、96年にいち早くネット業界に入る。
制作会社を経て外資系のIT系コンサル会社へ。当時日本で数少ないIA(情報設計)の専門家として、大手コマースサイトのリニューアルを多数担当後、ライブドアへ。現在はLINE株式会社にて、企業とのタイアップ広告企画を担当する。

一方で、運営する個人サイト「chakuwiki/借力」は累計4億2千万PVでベストブログ・オブ・イヤー賞(エンタメ部門)など受賞多数。サイトから発展した『バカ日本地図』などの書籍を宝島社などから6冊出版している。

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