セカンドスクリーンサミット@CES2014レポート――西村真里子(バスキュール プロデューサー)

事例①:「サブスクリプションモデル」

CBS Interactive

昨年に引き続き、基調講演をつとめたは、スーパーボウルやグラミー等の国民的イベント放映時のソーシャル連動企画や9つのテレビ番組で生放送視聴以外でもスマホ/タブレットで視聴者が番組と接するファンのためのサブスクリプションモデルなど積極的にセカンドスクリーンを活用した2013年事例を紹介しました。

1300万人がソーシャル上で盛り上るというグラミー賞ではセカンドスクリーンならではのファンサービスとして舞台裏紹介や、ソーシャルレポーターを一般公募してセレブリティーにインタビューしてもらう、などの取り組みを積極的に行っています。

また、一般人10人(男女5人ずつ)が一つ屋根の下で生活するリアリティショ-である「BIG BROTHER」では、番組出演者とのライブチャットの他、視聴者が投票に参加できたり、月額数十ドル払えば放送では流さなかった映像も入手できるなどのサービスもあり、ファンにとっては価値あるサブスクリプションモデルを提供できていると紹介されていました。

日本でもフジテレビの「テラスハウス」はテレビ放送以外の映像をYouTubeに流しファン獲得に役立っていると聞きますが、課金してでも見たい映像として月額料金を払う視聴者も出てくるのではないかと思いました。

さて、番組に沿ったストーリーテリングな内容をセカンドスクリーン上で提供すれば月額課金のサブスクリプションモデルも成功する、とテレビ放送以外の視聴者とのコミュニケーションを積極的に行っているCBS Interactiveですが、会場からの「既存のテレビ制作者はネットを軽視しているが、どうしたら良い関係を気付いてセカンドスクリーンを積極活用したテレビ番組が制作できるのか?」という質問に、「ネット側の戦略だけではファンが離れて行ってしまうので、制作プロデューサーと膝を付き合わせて番組を制作して行く必要がある。

同時に、今までのテレビ制作チームだけではファン獲得が難しいのでインターネットサービス、アプリ開発、データ解析に長けた企業(Mass Relevance, TV Plus…etc)とも連携して進めていく努力が必要だ」と回答していました。

テレビ制作プロデューサーの作るストーリーテリング、コンテキストを中心にしてセカンドスクリーン施策を考えていかないと誰にも使ってもらえないサービスになりかねません。

セカンドスクリーンが最初に騒がれた時期はGetGlueのようにテレビ番組とソーシャルの盛り上げをハッシュタグで結びつけるだけのものでした(セカンドスクリーン1.0)が、「セカンドスクリーン2.0時代」に突入した今、ストーリーテリング、コンテキストが成功要因として必要になります。

日本ではTBS「リアル脱出ゲームTV」を手がける中島プロデューサーが番組ストーリーの中にソニーモバイルや日産自動車の企業広告を絡めてプロモーションしており、まさにセカンドスクリーン2.0を実践、成功しています。

事例②:「音楽購買」

The CMA Awards

47回目となるカントリーミュージックアワード。2013年11月開催は過去に比べて5万倍(!!)のスマホからのアクセスがあり、音声認識サービスの「Shazam」アプリ経由でiTunesやAmazonでアワードのノミネート候補者や受賞者の楽曲を購入したそうです。

実際の購買者数および購買金額、番組からのセカンドスクリーン利用促進がどの規模であったのかは発表されていませんがニールセン調べで月間1840万人のアクティブユーザー(18歳以上のアメリカ人)がいる「Shazam」アプリ経由、97%のテレビ視聴者がスマホ/タブレットを利用しているといわれる米国市場、カントリーミュージックでは最大級のイベント、を掛け合わせると相当数の購買が見込まれたと考えられます。

日本でも昨年夏に日本テレビ が「THE MUSIC DAY 音楽のちから」で実施した視聴者参加の音ゲーにて140万人程が番組に参加しました。音楽番組で楽曲購買まで結びつけるのは視聴者にとって嬉しい購買導線かもしれません。

次ページ 「事例③:「クーポン/ポイント連動」」に続く


バスキュール プロデューサー 西村真里子氏
最高峰のコミュニケーション企画力を武器に、チャレンジを続ける「バスキュール」の一員。IBM、Adobe、Grouponを経て現職。バスキュールの「視聴者が主役になる(マス×インタラクティブ)新エンターテイメント」の代表事例である「BLOODY TUBE」(2013年6月)、日本テレビ「JoinTVプロジェクト」、mixi Xmas「インタラクティブCM 小さなサンタクロース」などに関わる。

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