「常に3カ月先の将棋のトレンドを考える」羽生善治さんに学ぶ発信力

記事の意図を検証することも

スポーツと同じく、将棋も勝負の世界。負ければ敗戦の弁を求められることも多い。そういった時にも、気負うことなく「等身大以上のことを伝えることはできないのだから、できる限りのことをするしかない」と話す。

ただし、書かれた記事を客観的に分析する習慣がある。ある程度、将棋を理解している人がその記事を読んだら、どう感じるか。明らかに書き手の基本的な知識や取材不足による記事なのか。あるいは、編集方針や世の中の論調に合わせるなど記者が何らかの意図を持って書いた記事なのか。「記事の内容について納得できないこともありますが、書き手の意図、その記事が出た理由を理解できれば、それ以上は関わらずに前に進むことにしています」。

記者からの「こういうことを言ってほしい」という趣旨ともとれる質問もある。「全く見当違いでなければ、相手の意図を読み取り、その流れで発言することもあります。どこまでが誤った憶測で、どこからが正しい憶測か。誰しも主観が入る以上、明確な線引きは出来ないものです」。

棋士は将棋連盟に所属しているが、基本的に活動は自由。取材対応も同様で、受けるか否かは個々の棋士が判断する。「私の場合、本業の対局を優先し、その時々で判断していますが、現実的には取材をお受けできないケースがほとんど。心掛けているのは、受けない時には早めに伝えること。依頼者の”不満足度”をいかに下げるか、という考え方です」。取材は、忙しい時に集中するもの。たくさんのメディアに接してきたこれまでの経験から導き出された考えだ。

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