「ニコ生」の楽しみ方は「ラジオ」的
谷口:私が広告のコンテンツ化に取り組むようになって約3年になるのですが、そこで感じているのは、ユーザーは結構優しいということです。広告だとわかっていても、面白ければ受け入れてもらえるな、と。
杉本:「niconico」は、どうしたらいいと思いますか。
谷口:やっぱり生放送が強いですよね。生放送は録画に比べ、同じ映像でも制作費が抑えられるメリットがあるので手軽に挑戦しやすいですし。それにしても「ニコ生」はどんどん放送時間が長くなっていきますよね。73時間ぶっ通しで放送された『龍が如く』ゲーム実況には驚きました。
私がコンテンツをつくるときは、スマホで見られることも想定し、軽量化していく方向にあります。動画は「時間をとられる」という警戒感を与えてしまうのか、あまりうまくいかず、私が「フォト紙芝居」と呼んでいる写真とテキストだけのコンテンツの方が手軽にウケやすい。「ニコ生」の長時間化は、コンパクトなものが求められる最近のコンテンツ消費の流れの中で異質だなと思っています。
杉本:長時間、生放送することで見ているユーザーに一体感が生まれるというか。「24時間テレビ」みたいな感覚なのかな、と思います。
谷口:コンテンツ自体を楽しんでいるというより、皆で居酒屋でしゃべっているような感覚を楽しんでいるように見えます。
杉本:ただ皆が参加して楽しむ場だとはいえ、生中継であっても一般ユーザーが動画を流すのは、まだまだハードルが高いと思います。よく企業の方に期待されるのが、例えば一般消費者が踊る動画を投稿してもらうようなキャンペーンの成功ケースがあったりすると、もともと投稿の文化のある「niconico」には投稿文化で公募すれば、多くのユーザーに参加してもらえるのではないかということ。でも、実際には公募して集まるコンテンツは200~400くらい。企業の方たちが、想定する数字とかい離しているケースがあります。
谷口:でも公募以外でも、参加感を味わってもらえる企画はいろいろありますよね。最近、「ニコ生」で企画を考える時には、盛り上げるために、ユーザーのコメントに突っ込みを入れられることを条件にタレントさんを選んでいます。
杉本:生放送は動画コンテンツですが「ニコ生」なんかを見ていると、すごいラジオ的な楽しまれ方をしているなと思います。音声がベースになっていて、そこに映像が入ってきているというか。
さらに「ニコ生」の場合、テキストでコメントも乗ってくる。日本はガラパゴス化していると言われますが、母国語である日本語のスキルが高い国なので、動画でも「テキスト」を許容できるし、さらに「アスキーアート」含め、遊び道具として言葉も使えるがゆえに、独自のコンテンツの楽しみ方、参加の仕方が浸透しているのだと思います。そこを逆手にとって、ユーザーの遊びに乗っていくようなプロモーションが出てくるといいですね。