マルハニチロホールディングス自主回収事件におけるメディア及び市場の反応

メディアの波及状況及び市場への影響

各メディアの波及状況並びに市場への影響は以下のとおりとなった。

テレビ報道

今回の事件では、テレビ報道に関して、年末の自主回収発表の後、原因に対する明確なメッセージが届かず様々な憶測が飛び交い、一方で、意図的な混入に対する「事件性」が感じられたことで、連日報道される結果となった。

年始の特番で露出数は一時的に減少したものの6日には改めてまとまった報道がなされたことにより、自主回収発表直後よりもインパクトは強いものとなり、広告価値換算にすれば全体では約73億円に相当するネガティブキャンペーンに当たる計算となった。

(図1)資料提供(VLe)

(注)「検索数」では、青色がマルハニチロ、ピンク色がアクリフーズ

ウェブニュース

ウェブニュースは、年末の「自主回収」の事実報道の後、被害状況が経過を追って徐々に判明してきたことなどにより、初報の報道件数を超え、カネボウの自主回収問題と比べても約3倍の報道件数に及ぶ結果となり、広告価値換算では、約3.9億円相当のネガティブキャンペーンに当たる計算となった(注)

(注)カネボウの自主回収発表から41日間に報道された件数に対する比較を行ったものである。

Twitter

Twitterは、拡散スピードが最速のメディアであり、一度急上昇した後、すぐに沈静化するケースが多いが、今回の事件では自主回収が報道された後も3日間に渡りツイートされていることが分かった。「自主回収」「農薬」「立入検査」「意図的」「実被害」などの観点より、次々と新たな情報が増えたことで、テレビ報道やウェブニュースに拾われてしまい、拡散が継続した可能性が高い。

ブログ

ブログは、単純な「自主回収」における反応としては大きくなかったが、悪意の異物混入という観点からの「事件性」について書き込みが出始めると、徐々に件数が増えていった。さらに、年明け以降、実被害の拡大報道が始まると、口コミが増える傾向となった。

次ページ 「市場の反応」に続く

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白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

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