PARTY NYオフィスが始動するまでの具体的なあれこれ

無理に日本を背負わなくたっていい

このコラムは基本的には、これから海外で何かやってやろう、とにかく行ってみよう、という方の参考になると良いなーなんて思って書いています。

今回は、海外で仕事をしてみよう、というときになぜ私がニューヨークを選んだか、いざ行くとなったら何が必要でどんなことをしなくてはならないか、というあたりのお話を書かせていただきたいと思います。

前回は、なぜ海外で仕事することを決意したのか、というところを「日本はもしかして鎖国状態なのではないか」という話を交えて書かせていただき、いろいろな反応をいただいたわけですが、誤解を招きたくないのは「鎖国」と言っても、その中で過ごす人によってメリットもデメリットもあるということです。

私の場合、デジタルを軸としたものづくりを生業としている人間なので、インターネットを通して世界に何かを発信することを避けられません。その場合、日本の外の世界を見ない・知らないよりも、見る・知る方が好都合だったりします。

何が言いたいかというと、私が海外に出ようと決意したのは、自分にとっては今後楽しく生きていく上で日本に留まっていることのデメリットが大きい、という個人的な理由だったりするわけで、「鎖国だから日本はダメなんだ!」とか「日本はこうあるべきだ!」などと言いたいわけではないのです。

私は「日本を変えたい!」といった大それたことを考えるような偉い人ではないですし、日本がどうなるかよりも、自分がどう生きるかで必死だったりします。

そもそも海外で何かをやる際に、「日本の」を枕言葉にすることが多すぎるのではないかと思っています。「日本のクリエイティブを世界に」とか「日本の技術力を世界に」とか、「日本のアニメやオタク文化を世界に」とか。

このコラムも、編集部の方からのテーマに「日本のクリエイティブは世界で通用するか?」というようなものも最初あったのですが、そういう言い方は避けさせていただきました。

もちろん私たちは日本人なのであって、日本語という言葉をはじめとした日本文化、日本人の感覚、日本人の考え方から逃げることはできません。もちろん私もばりばりの日本人です。靴を履いたまま家に上がり込むことに違和感がありますし、海外のトイレに入るたびに「ああ、今ここにウォシュレットがあったらどんなに素晴らしいだろう」と思います。「日本人で良かった」と思っていますし、実際こんな素晴らしい国は他に無いよなあと思います。

私という日本人が海外で何かをつくるわけですから、もちろん何がしかの日本っぽさは出てくるはずです。しかし、だからといって意識的に日本を背負う必要は特に無いはずですし、日本の何かを輸出する義務はないはずです。日本人であることは私たちの特徴でしかないわけであって、義務ではないのですから。

次ページ(2/3) 「ニューヨークは「外国人」がいない街」へ続く

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清水 幹太(PARTY チーフ・テクノロジー・オフィサー)
清水 幹太(PARTY チーフ・テクノロジー・オフィサー)

東京大学法学部在学中(のち中退)からプログラマー・デザイナーとして活動。2006年にイメージソースに入社以降は、テクニカル・ディレクターとしてウェブサイトから映像まで、様々なフィールドに渡るコンテンツ企画・制作に携わる。2011年、クリエイティブラボ「PARTY」設立に参加。クリエイティブ・ディレクター、チーフ・テクノロジー・オフィサーとして、インタラクティブを中心にジャンルを問わず、高い技術力を背景にした様々なクリエイティブに関わっている。2013年9月よりPARTY NYCに赴任。カンヌ・クリエイティビティ・フェスティバル、アジア・パシフィック広告祭等、国内外での受賞多数。

清水 幹太(PARTY チーフ・テクノロジー・オフィサー)

東京大学法学部在学中(のち中退)からプログラマー・デザイナーとして活動。2006年にイメージソースに入社以降は、テクニカル・ディレクターとしてウェブサイトから映像まで、様々なフィールドに渡るコンテンツ企画・制作に携わる。2011年、クリエイティブラボ「PARTY」設立に参加。クリエイティブ・ディレクター、チーフ・テクノロジー・オフィサーとして、インタラクティブを中心にジャンルを問わず、高い技術力を背景にした様々なクリエイティブに関わっている。2013年9月よりPARTY NYCに赴任。カンヌ・クリエイティビティ・フェスティバル、アジア・パシフィック広告祭等、国内外での受賞多数。

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