ニューヨークは「外国人」がいない街
実はそれが、私がロンドンでもなく、パリでもなく、ニューヨークで仕事を始めることにした理由の1つに関係しています。
ニューヨークは、言わずもがな「人種のるつぼ」です。実際暮らしてみると、あまりにもいろんな人がいます。出会った人に「どこ出身?」って聞くと、とにかくいろんな国の名前が出てきます。何語なのかさっぱりわからない言葉でケンカしている人がいます。肌の色も髪の色も瞳の色も、いろんなバリエーションを持った人たちが地下鉄に一緒に乗って通勤します。
何より驚くのは、非常によく道を聞かれるということです。日本だったら、誰がどう見ても外国人な方に日本人が道を尋ねることはまずありません。
しかし、ニューヨークには様々な人種の方々がいるので、そもそも「誰がどう見ても外国人」な人がいませんし、いろんな国の人がいろんな国の人に道を尋ねるわけです。
つまり、ニューヨークでは、あまり自分たちが日本人であることを意識する必要がないのです。それは、人種を問わず活躍することができるということでもありますが、全く特別扱いされることがないということでもあります。
非常に厳しい場所だけど、チャンスはたくさんある。言い方は変ですが、ハイリスクハイリターンで、ギャンブル性がある街、ということかと思います。どうせやるならそういう環境でやってみよう、というのが、PARTYがニューヨークオフィスをつくることにした大きな理由の1つでした。
強力な新人も入って、PARTY NYC始動
さて、ニューヨークに移って仕事してみよう。言うのは簡単です。じゃあどうやってそれを実現するのか。
私には10年連れ添った妻と、6歳の息子がいます。家族が大好きですし、単身赴任はイヤです。まずは、妻に土下座して、一緒にニューヨークに引っ越すことに同意してもらう必要がありました。どうにかこうにか、理解をしてもらい、さあ何から始めよう、ということになります。
まずは会社。今は一緒にニューヨークオフィスを運営している川村(真司)が、先んじて法人をつくっていました。最初の操業資金は、東京の会社から捻出します。
そのためには、銀行口座をつくらなくてはいけない。TAX ID(税金の管理番号?)も取らなくてはいけない。やるべきことがどんどん出てきます。
オフィスはどうするのか。知り合いのつてで、ニューヨークの大手映像制作会社であるradical mediaが部屋を貸してくれることになりました。だいたい8畳くらいしかない狭い部屋です。それでもラッキーとしか言いようの無い形で入れてもらえることになったので、そこから始めることにしました。
スタッフはどうするのか。川村と私で始めることは決まっていました。2人ともクリエイティブディレクターとして仕事をしていますが、考えるだけではなく、実際に手を動かして何かをつくることができるタイプではあるので、まずは2人でもどうにかこうにかやれなくもないかな、などと考えていた矢先に、トヨタの有名な「IQ FONT」の企画をやっていたトムというベルギー人のクリエイターがPARTYに応募してきてくれました。知識量は膨大、アイデアを出すスピードも速いということで、トムも含めてとりあえず3人でものをつくる、ということにしました。
経理や事務は、川村からのつながりで出会うことができたジェーンというフリーランスのマネージャーにお願いすることになりました。「フリーランスの経理」は日本の感覚だと珍しい感じがしますが、アメリカには結構います。
このジェーンは、実はとんでもないおばちゃんで、元々はTEDのプロデューサーをやっていて、とにかく顔が広く、ものすごい人脈を持っていたりします。たくさんの会社の経理事務をやっているので、経営についてもいろいろ教えてくれます。そんなすごいおばちゃんが、私たちがつくってきたものに興味を持ってくれて、助けてくれることになりました。彼女が第4のメンバーです。