広告・メディア業界を目指す学生の皆さんに「新しいコミュニケーションビジネス」を創る3人の著者がアドバイス
【バックナンバー】
- メディアの本質を知れば、やりたいことができる場は広がる 田端信太郎さん(LINE 執行役員 広告事業グループ長 )
- 広告業界は “ 自由演技 ” を行える幅が広がっている 廣田周作さん(電通 プラットフォーム・ビジネス開発局 コミュニケーション・プランナー)
第1回:「MEDIA MAKERS-社会が動く『影響力』の正体」著者
田端信太郎さん(LINE 執行役員 広告事業グループ長 )
昨年11月、全世界のユーザー数3億人を突破したLINEの広告事業を統括する田端信太郎さんは60万部発行の「R25」、5億PVの「livedoorニュース」など、デジタル・紙双方で数々のメディア・ビジネスに関わってきました。その経験をもとに、2012年2月から7月まで12回にわたり「アドタイ」でコラム記事「メディア野郎へのブートキャンプ」を執筆、さらに2012年11月には、コラム記事に大幅に加筆・修正を加えた書籍「MEDIA MAKERS-社会が動く『影響力』の正体」を刊行しました。メディア環境の変化から広告ビジネスの今、さらに未来を見据える田端さんに、広告・メディアに関わる仕事を目指す学生の皆さんへのアドバイスを聞きました。
メディアを取り巻く環境は激変していますが、最も大きな変化は「情報発信者であることの稀少性がなくなった」こと。テクノロジーの進化が情報発信に必要なコストを著しく下げ、誰もがメディアを持てるようになったことです。
従来、情報発信をするためのメディアを持つには多大な費用のかかるインフラが必要で、だからこそ一部の人しか情報発信ができず、テレビのキー局、大手新聞社などマスメディアが情報発信者として、大きな影響力を保持してきました。
田端さんのLINEも新卒採用活動中。田端さん自身、新卒、キャリアともに人材採用のための説明会に登壇する機会も多く、この業界を目指す若い人たちとの接点も多い。”
広告ビジネスも同様で、メディア自体の数が限られていたので、そこにひもづく貴重な広告枠を抑えることで、優位性を保ってきました。川上にある供給元を抑える、いわば「油田を抑える」ことで成り立ってきたビジネスモデルと言えますが、今は個人であろうと誰でも勝手に、かつ無尽蔵に油田を掘れるような時代。
では、広告・メディアビジネスはもう終わりなのかと言えばそうではなく、既得権益が薄れつつある環境だからこそ、若い人にとってチャンスがあり、今まさに面白い業界だと言えるのではないでしょうか。
やはり特にネット・デジタル・スマホの領域が面白いと思います。「デジタルが偉い!マスはダメだ!」とは思わないですが、広義のデジタルメディアの働く場としての魅力を一つだけ挙げれば、カジュアルに失敗ができる、ということになります。
圧倒的に多くのトライアンドエラーの場数を踏めるという点で、若い人にとって魅力的な環境ではないかと思います。僕は人の成長スピードや仕事の面白さは、トライアンドエラーをどれだけ早く繰り返せたか、場数を踏めたかで決まると思っているのですが、その意味で、メディアに関わらずデジタル領域の仕事は魅力的です。
僕自身は、メディアというものが持つ魔力に取りつかれているところがあり、デジタルの領域でも特にメディアに関わる仕事をし、その経験をもとに「MEDIA MAKERS-社会が動く『影響力』の正体」という本も書きました。
この本は例えばこれから、さらにスマホが浸透し、ウェアラブルデバイスが登場し、紙の新聞が全てタブレットで配信されるような時代になっても、そういったデバイス環境の変化に左右されない、メディアの本質について書いたつもりです。
皆さんが「メディア」と聞くと、テレビや新聞、ネットなどを思い浮かべると思いますが、メディアそのものの機能や役割を知れば、一般的にはメディアビジネスをしているとは思われていないような企業の中にも、メディアを立ち上げ、つくる「MEDIA MAKER」の仕事も見つかるのではないでしょうか。
通販会社や、商品やテナントの“編集”をする百貨店、ショッピングモールを運営する不動産デベロッパーなどなど…「どんな属性の人たちに、どんな気持ちで、何のためにその場に集まってもらい、その欲望をどうやって肯定していくのか」を考えるのが、メディアづくりの根幹と思いますが、それを考える仕事は、社会の中にたくさんあります。
「メディア企業」という枠にとらわれず、自分自身がメディアに関わることでしたいことは何かを知り、さらにそれができる場所はどこにあるのかを俯瞰的に知ると、自分の可能性も広がるのでは。そんな視点を得る上で、『MEDIA MAKERS』を参考にしてもらえると嬉しいですね。