「大人のたけのこの里」ヒットを支えたパッケージデザインの「トンマナ」

パッケージのメディア特徴は購買に近いことだ。パッケージを見る人は、商品の購入をその場で検討している人である。それだけ、販売促進におけるパッケージデザインの役割は大きい。パッケージデザインを手掛けるアイ・コーポレーションの小川亮氏に、優れたパッケージを紹介してもらう。

ここでは、『販促会議』2014年2月号に掲載された連載「販促NOW-パッケージ」の全文を転載します。
(文:アイ・コーポレーション 代表取締役 小川 亮)


2013年は「大人の」という枕詞の付く商品をよく目にした。「大人の」と前置きする通り、もとは子どもや若年層をターゲットにした商品をベースにしているため、菓子や飲料などの身近な商品に多いようだ。

こういった特定のターゲットやシーンを切り取った市場は、毎年何らかの形で登場する。例えば、「朝専用」「夜専用」「健康」「B級グルメ」「お店の味」といったさまざまな区切りが存在する。

共通するのは、カテゴリーを超えて商品が登場し、大小差はあるもののブームになる点だ。マーケターは、この流れをいち早く捉え、自社ブランドの価値創造のチャンスとして活用することが求められる。

こういったブームを生かすためのパッケージデザインは、どうあるべきであろうか。ポイントは、「みんなで共通のトーン&マナー(トンマナ)をつくる」ことである。

1979年に発売された「たけのこの里」(明治)は、竹やぶのある農村が描かれたパッケージでおなじみのロングセラー商品だ。このブランドから13年9月に、「大人のたけのこの里」が発売された。

通常商品よりも甘さひかえめ。姉妹商品「きのこの山」の大人バージョンもある。

「大人の上質な時間に溶け込むデザイン」(プレスリリースより)を目指したという通り、同商品のパッケージは全体がダークトーンでまとめられ、天面のビジュアルは上質な木製のテーブルに、ぼかしをかけた暗めのシズルカットで奥行き感が演出されている。

竹をモチーフにした従来のブランドロゴはシルエットだけ生かし、金色で配置することで、全体の雰囲気に調和しながらも沈まずに目を引いている。

明朝体の「大人の」というコピーに続けても違和感がない。

また、側面にはブランドカラーの緑の中でも品質感のある色を選び、ブランドを想起させる格子模様もうっすら見える。天面から5mmほどはみ出して見えるこのブランドカラーがアクセントになっている。実に完成度の高い、考え抜かれたパッケージデザインである。

しかし、参考になるのはデザインの完成度だけではない。新しい市場が立ち上がる時のパッケージには、独特のトンマナが成立する。「大人の」商品群のパッケージには、ダークトーンで上質感を演出し、金色を使用することが多い。

このようにパッケージがある一定のトンマナでそろってくると、それが消費者に対してのカテゴリー記号となり、売り場で一定の“かたまり”として存在感を示し、市場も盛り上がるのだ。

例えば、健康・特保系商品のパッケージは、効果を感じさせる白や黒といった強い色を使用する場合が多い。

13年は多くの「大人」商品が登場したが、「大人」「オトナ」「OTONA」とその表記もデザインのトンマナもまだまだ統一感がない。パッケージが統一感を帯びて、新商品も引き続き投入されれば、14年も「大人」マーケットが継続・拡大していくに違いない。例えば「大人菓子」だけを集めた棚が売り場に登場するのも遠い日ではないように思う。

新市場を盛り上げるためには共通のトンマナで、“かたまり”の存在感をつくってほしい。その時、「大人のたけのこの里」のデザインは参考になるだろう。

■プロフィール
小川 亮氏(おがわ・まこと)
慶應義塾大学卒業後、キッコーマンに入社、宣伝部・販促企画部・市場調査部に勤務。同社退社後、慶應義塾大学大学院ビジネススクールにてMBA取得。現在、パッケージデザイン会社のアイ・コーポレーション代表取締役。飲料、食品、化粧品などの商品企画やパッケージデザインを多数手掛ける。


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