NY初仕事は、米ロック界のボス、ブルース・スプリングスティーンのベストアルバム

初めて使う編集ソフトと不眠不休で格闘し、国民的アーティストのベストアルバムを製作

現在、最新作『ハイ・ホープス』が、日本を含む20カ国で1位を獲得した他(アメリカ、イギリス、カナダ、アイルランド、ドイツ、スイス、イタリア、スペイン、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、ノルーウェイ、クロアチア、チェコ、オーストラリア、ニュージーランド、オランダ、ギリシャ、ベルギー、日本)、30カ国のiTunesアルバム・チャート1位を獲得世界的ヒットを記録しているブルース•スプリングスティーン。日本では、オリコン週間洋楽アルバムランキング第1位(2月10日付)を獲得した。アメリカでは通算11作目の全米アルバム・チャート1位獲得となり、全米アルバムチャート1位獲得数が歴代3位となった。イギリスではマイケル・ジャクソンを抜き全英1位獲得数歴代4位となる大記録を打ち立てている。

そんな誰だか知らないおじさんバンドのベストアルバムをデザインさせて頂くことになり、私の周りのアメリカ人友人達は大興奮。日本でいうところの「尾崎豊のベスト盤のデザインさせてもらうことになった!」という興奮状態でしょうかね。(個人的には尾崎豊さんよりもBOOWY派ですが。)

ちなみにブルース•スプリングスティーンは今も現役でアルバム作りまくってコンサートもしまくっています。しかも最近彼の息子がファイアーファイターとして就職したらしく、ブルーカラーファン層の支持を一層高めたのでは?

デザインは『エッセンシャル•シリーズ』というベスト版シリーズなので、カバーデザインはもう文字も決まっていて自由に出来るのは写真選びだけ。とはいってもブルースが選んだ物を入れるだけなのだ。中身は自由に組ませてくれるから楽しかった。

ただ、唯一ぶち当たった難問がQuarkXPressだった。InDesignが主流の今では聞くこともないエディトリアルソフト、QuarkXPress。当時の私は使った事が一度もなく、それで数十ページのレイアウトをしなければならなかった。

素直に「使った事ないので分からないのですが…」と伝えたところ、「じゃこれ読んで」と渡された数冊の取扱説明書。読むだけでも大変なのに、更に英語。就職して1ヶ月でオフィスに泊まり込みになるとは思いもしなかったが、背に腹はかえられぬ…。

数日後、会議室に向かって歩いている私に、バンダナをしたおじさんが「Could you tell me where the bath room is?」と聞いてきた。「真っすぐいって左側だよ」と伝えてミーティングに備えていると、そこに現れたのは先ほど私にトイレの場所を聞いてきたおじさんで、なんとブルース本人だったのだ!私がデザインしていることを聞いた彼は「Amazing!」とか「Cool!」とかを連発してくれた。こういわれたら、何が何でもやるしかない!

こんな風に初の仕事は相手を知らないツールも使えないで、冷や汗ものでこなした。終わったあと、「ここからまた進んでいくんだ!」って思ったものだ。こうやって今までやってきた。そして今がある。そしてこれからもそうやっていくのだろう。

しっぽりまとまったところで、思い出話と熱燗のおかげで心もカラダもぬくぬくに。今夜も雪らしいが=明日も寒いが、いっちょ乗り切りますか!と酔っ払いは今宵も誓うのであった。

【更新履歴】
2014/02/14 記事の一部を修正致しました

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Fuko Chubachi(ソニーミュージック・シニア・アートディレクター)
Fuko Chubachi(ソニーミュージック・シニア・アートディレクター)

東京の広告会社勤務を経て、2002年渡米。2003年ニューヨークのソニーミュージック入社。アートディレクターとして、アーティストのイメージ作り、撮影、ロゴやジャケデザイン、ビデオなどアーティストのアート関連すべてを総合で担当。ビヨンセやマイケル・ジャクソンをはじめ、デスティニーズチャイルド、ケリーローランド、ブランディ、グッドシャーロット、アダムランバートなどのアート制作に関わる。
2013年夏、デジタルマガジン『HEAPS』を創刊。編集長兼クリエイティブ・ディレクターとしても日々格闘中。

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Fuko Chubachi(ソニーミュージック・シニア・アートディレクター)

東京の広告会社勤務を経て、2002年渡米。2003年ニューヨークのソニーミュージック入社。アートディレクターとして、アーティストのイメージ作り、撮影、ロゴやジャケデザイン、ビデオなどアーティストのアート関連すべてを総合で担当。ビヨンセやマイケル・ジャクソンをはじめ、デスティニーズチャイルド、ケリーローランド、ブランディ、グッドシャーロット、アダムランバートなどのアート制作に関わる。
2013年夏、デジタルマガジン『HEAPS』を創刊。編集長兼クリエイティブ・ディレクターとしても日々格闘中。

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