ソーシャルメディアリスクへの対応
こうしたソーシャルメディアリスクを予防管理するため、ここ数年来、「ソーシャルメディアガイドライン」を作成し、公表している企業がある。内容も特徴的なものが数多くあり、千差万別であるが、基本的な目的は以下の2つが挙げられる。
- 顧客をはじめとする幅広いステークホルダーに対して企業としてどのような姿勢でソーシャルメディアに臨むかという基本方針を示すための「対外向け」の視点
- 従業員や協力会社などを対象にソーシャルメディアに向き合う上での心構えを定める「社内向け」の視点
これらのガイドラインで、一定のリスクはコントロールできるのではないかと考えられていた。
しかし、この数カ月で企業のリスク管理視点は大きく変動、実際にソーシャルメディアで拡散した情報から危機的事態に発展した場合の危機管理対応マニュアルの整備が焦点となってきている。昨年夏以降吹き荒れた「従業員等の不適切投稿」をはじめとするソーシャルメディア上のでリスクの顕在化は、企業経営陣を震撼とさせ、モニタリングの重要性をあらためて認識させた。
同時に危機的事態の認知後の対応を実際に経験してみると、既存の「経営危機管理規程」における風評リスクの対応や「広報マニュアル」におけるマスコミ報道後の対応では不十分で、多くの企業がその対処や手順に苦労したと聞く。その結果、報告体制のみだれや情報開示の遅れにつながり、さらなる危機的事態に連鎖することもあった。
不祥事などに関して、これまでの対外的な公表を認知後72時間以内としていた多くの企業は、ソーシャルメディアリスクの顕在化で考えを改めざるをえなくなった。インターネット上では拡散が始まってから約2時間程度で風評化する。実際に経験した企業では、対策本部設置や臨時取締役会の開催を待たず、危機管理担当役員と広報部長で初動のアクションプランを作成、CEO(会長)やCOO(社長)に報告、決裁と同時にプランの実行を行うといったラピッドリスポンス(緊急初動対応)を実施した会社もある。
個人情報保護法が施行された際にも、情報流出時に情報主体への対応、行政への届出・対応、二次被害としての反社会的勢力による詐欺被害対策など、通常の事例とは異なる複雑な対処が必要となり、情報漏洩に対する危機管理細則や対応マニュアルを別途作成し、経営危機管理規程にぶら下げる企業も多く存在した。
ソーシャルメディアリスクについても、全く同様で、一般的な対応では対処できない課題が多く、細則やマニュアルを別途整備しておく必要性がある。