KDDI 「auスマートパス」
ケータイ・スマートフォンジャーナリストの石川温氏が注目するアプリを紹介。ここでは、『販促会議』2014年3月号の記事を掲載します。(雑誌掲載当時の情報をもとに書かれた記事です)
石川 温(いしかわ・つつむ/ケータイ・スマートフォンジャーナリスト)
1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。
KDDIが提供する「auスマートパス」の会員数がまもなく1000万を突破しようとしている。
auスマートパスは月額390円で、500本以上のアプリやサービスが使い放題になるサービスとしてスタート。その後、内容の拡充が図られ、今ではウィルス対策アプリの提供や、iPhoneの故障(水没・自損)時の修理代サポートなども行われている。中でも人気なのが、クーポンの配信だ。コンビニ、ファストフード、居酒屋などがほかよりかなりお得なクーポンを配っている。
かつて、コンビニ大手の「ローソン」は、同社が戦略商品として位置づけている150円の「プレミアムロールケーキ」を無料で交換できるクーポンを配信していた。
コンビニで使えるクーポンはいろんなところで配られているが、150円がまるごと無料になるクーポンとは太っ腹。実際にauスマートパスのクーポンで、ロールケーキをもらってきたことがあったが、ただで食べられるロールケーキほどおいしいと感じたことはなかった。ただ、ロールケーキ1個を無料でもらうだけでは恥ずかしいので、缶コーヒーや雑誌を一緒に買ってしまった。
無料のクーポンを配っても、多くの人はそれ以外のものも買って帰る。また、その後はすっかりロールケーキの虜となり、ちょくちょく仕事帰りにローソンでロールケーキを買うようになってしまった。こう考えると、まんまとKDDIとローソンの狙いにはまってしまった感がある。
auスマートパスがほかのクーポン配信サイトと異なるのが、月額390円の有料サービスの一部で運営されている点だ。2013年10月時点で、800万の契約者を抱えているが、それだけで月間30億円以上の収入がKDDIにもたらされる。
KDDIは、コンビニやファストフードなどにその収入の一部を支払い、他社よりも魅力的なクーポンを提供してもらえるように働きかけるのだ。
スマートフォン市場はNTTドコモからもiPhoneが発売されるようになり、端末ラインアップでは差異化しにくくなっている。KDDIとしてはauスマートパスにより、サービス面で他社にはないものを提供できるとあって、さまざまな企業とのコラボレーションに力を入れているのだ。
一方のクーポンを提供する側も、1000万人に近いユーザーに対して、戦略的に商品をプロモーションできる。KDDI、クーポン配信企業、ユーザーの3者がそれぞれメリットを得られる関係が構築されているのだ。日本国内のインターネット有料サービスの会員組織で最も多いユーザー数を誇るのは、Yahoo!プレミアムの919万(2013年3月時点)と言われている。auスマートパスはこの数字を超えると見られており、将来的には国内最大の有料サービスとして、さらに影響力を発揮する可能性もありそうだ。
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