日本人映像スタッフの顔を思い浮かべて涙した夜
初日の夜からテンポ良く撮っていかないと間に合わなくなることは明らかでした。しかし、ロケハンをして、夕食をとって、長丁場だから今日は早めに寝ようぜ! みたいな感じの欧米っぽいペースに初日から巻き込まれながら、2日目の夜を終えた段階で、まともに撮れているカットが1カットだけ、という絶望的な現実が立ちはだかりました。そして、だんだん自分がこの撮影でやらなくてはならないことが見えてきました。
アングルを決める判断や照明の判断も求められるし、ストーリーに沿った演出の判断を行わなくてはいけない。
どんどん後ろ倒しになっていくスケジュールを改訂しながら、「次はここでこのカット」みたいに進行を決めていかなくてはいけない。
ロケ地を移動するごとにぐちゃぐちゃに袋に入れられてしまうフィギュアの整理をしなくてはいけない。
カメラと自分のPCを接続して、コマ撮りソフト上でフィギュアの位置を確認してシャッターを押し続けなければならない。
発光を防ぐため、プリンタ業者から届いたフィギュアの土台の部分を絵の具で黒く塗らなくてはいけない。
フィギュアの腕が折れたら修理しなくてはいけない。
撮れたものをFInalCutに突っ込んで仮に編集していかなければいけない。
つまり、監督をやりながら進行管理をやりながら撮影助手をやりながらその他いろいろ同時にやる、それを全部自分で仕切らなければ絶対に終わらない。
普段の撮影では制作チームにやってもらえてしまうことも含めて、すべて考えて実行しつつ、演出もしなくてはいけないのです。撮影場所であるビバリーヒルズの路上で、いつも日本でお世話になっている映像制作会社の皆さんの顔を思い出し涙しました。そう。舞台が夜の街の路上なので、基本的にロケ地が路上なのです。被写体が小さいので、道の上で寝そべりながら絵を調整して、PCを操作する必要があります。
1コマ1コマ、カメラが動かないように撮影していく必要があるので、ものすごく時間がかかります。車に轢かれそうになったり、いきなり芝生用のスプリンクラーが水を出し始めてずぶ濡れになったり(それがカメラにかかって、そこまで撮影したコマがパーになったこともありました)、砂まみれになったり、慣れないソフトを使っているので、撮ったはずのデータが1シーン丸ごと消えてしまったり、本物のビバリーヒルズ警察が来て撮影を止められたり。
ビバリーヒルズの路上でケツを出しながら作業する私