隣の人の“アイデアの発火”をトレースする方法 – Spark Shadowing(後編)

前回の記事「隣の人の“アイデアの発火”をトレースする方法 – Spark Shadowing(前編)」はこちら

Shadowingは「間違っていたほうが良い」

面白いことに、この仮説が正解かどうかは、さほど重要ではない。むしろ、間違っていた方がお得である。間違っていた場合、恐らくロダンさん自身から正解が聞けるだろう。

これを正当な「ロダンさん思考法」と呼ぶならば、先ほど不正解となってしまった自らの仮説は自分なりの「ロダンさん的思考」という別の作法として依然活用可能だ。一回のShadowingにより、二つの思考法が手に入ったことになる。

ここからも連想できるように、自らの発想をShadowingすることも有意義だ。多くの人は、自分自身の発想プロセスについて無自覚である。たまた良いアイデアが発想されたときに、それと同じ作法を再現できるようにできるか。

他者の思考のshadowingは、トレーニングを通じて比較的すぐにできるようになる。いわば初級編である。発展編、もしくは上級編として挑戦してほしいのが、この「自分自身の無意識的な発想のshadowingを行う」訓練だ。

例えばそれにより、自分の発想プロセスを人に伝えることもできるようになる。さらに、普段の発想バイアスを客観的に捉え、あえて思考モード、思考OSを切り替える、ということが可能になる。自他の思考をメタに捉え、それを意識的にコントロールするのだ。今日は意図的に普段と逆の手順で発想しよう、この会議が終わるまでは役員の立場になって思考しよう…などなど。

「偶然」の発想を「必然」に変える

まとめて換言しよう。Spark Shadowingは、自他の無意識的な思考作法をなぞる行為だ。「発想のリバースエンジニアリング」の作法と言うこともできる。普通無意識的な思考回路を意識的にトレースすることで、再現可能な「型」を作る。

発想は、一見コントロール不可能な「偶然」に支配されたブラックボックスだ。これを敢えて再現可能な「必然」に置き換えることができないか、という試みだ。

次ページ 「Spark Shadowing の活用法」に続く(2/3)

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渡邉 康太郎(takram design engineering )
渡邉 康太郎(takram design engineering )

アテネ、香港、東京で育つ。大学在学中の起業、ブリュッセルへの国費留学等を経て、2007年よりtakram参加。最新デジタル機器のUI設計から、国内外の美術館でのインタラクティブ・インスタレーション展示、企業のブランディングやクリエイティブ・ディレクションまで幅広く手がける。代表作に、東芝・ミラノサローネ展示「OVERTURE」、NTTドコモ「iコンシェル」のUIデザイン、虎屋と製作した未来の和菓子「ひとひ」など。

多くのプロジェクトを元に体系化した「ものづくりとものがたりの両立」という独自の理論をテーマに、企業のデザイナー・エンジニア・プランナーらを対象とする人事研修、レクチャーシリーズやワークショップを多数実施。国内外の大学やビジネススクールでの講義・講演も。香港デザインセンターIDK客員講師。独red dot award 2009等受賞多数。趣味は茶道。

AXIS、IDEO Tokyoとともに、デザイン思考を広める一般向けの連続イベント「Collective Dialogue - 社会の課題にデザインの力を」を共同主宰。著書に「ストーリー・ウィーヴィング」(ダイヤモンド社)。その他「THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics – Tools – Cases 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計」(BNN新社)の監修・解説を担当。

渡邉 康太郎(takram design engineering )

アテネ、香港、東京で育つ。大学在学中の起業、ブリュッセルへの国費留学等を経て、2007年よりtakram参加。最新デジタル機器のUI設計から、国内外の美術館でのインタラクティブ・インスタレーション展示、企業のブランディングやクリエイティブ・ディレクションまで幅広く手がける。代表作に、東芝・ミラノサローネ展示「OVERTURE」、NTTドコモ「iコンシェル」のUIデザイン、虎屋と製作した未来の和菓子「ひとひ」など。

多くのプロジェクトを元に体系化した「ものづくりとものがたりの両立」という独自の理論をテーマに、企業のデザイナー・エンジニア・プランナーらを対象とする人事研修、レクチャーシリーズやワークショップを多数実施。国内外の大学やビジネススクールでの講義・講演も。香港デザインセンターIDK客員講師。独red dot award 2009等受賞多数。趣味は茶道。

AXIS、IDEO Tokyoとともに、デザイン思考を広める一般向けの連続イベント「Collective Dialogue - 社会の課題にデザインの力を」を共同主宰。著書に「ストーリー・ウィーヴィング」(ダイヤモンド社)。その他「THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics – Tools – Cases 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計」(BNN新社)の監修・解説を担当。

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