隣の人の“アイデアの発火”をトレースする方法 – Spark Shadowing(後編)

産物と副産物 – Spark Shadowing の活用法

一つ留意点がある。「他人の思考を自らの中で再現しようとすること」は飽くまでプロセスの一部に過ぎない。Shadowing は通過点だ。

もとはブラックボックスだったロダンさんの思考を、自分の中で「P」と名付けたとしよう。ここで得られたPは、今後いつでも利用可能だ。a以外のインプットを入れれば、他のアイデアが出てくる。

aという刺激、もしくはインプットを得て、ロダンさんはPという思考法を使い、Aというアイデアを得た。おなじPにbという刺激を入れれば、異なるアイデアBが得られるはずだ。

でもここで思考を止めずに、Aというアイデアを別の角度から捉え直してみよう。Aを思いつくことができる、別の思考法も考えてみるのだ。一つのアイデアに辿り着くにも、複数通りの道筋があっていいはずだ。ロダンさんの思考の別の可能性を検討する。

同じアイデアAに辿り着くための、別の思考法を検討する。Qと名付けてみる。同じ刺激bを使っても、思考法が異なるので、結果はそれぞれBとB’といったように異なるものとなる

次はこのB’を得るための、Q以外の思考法が無いか考えてみよう。このように、無限に思考を広げていくことができる。

このプロセスを無限に繰り返すことができる。 得られるものは、結果としてのアイデアA, B, B’, C, C’…といった様々なバリエーションに富んだアイデアだ。副産物として、別のシーンでもいつでも活用可能な発想の作法、P, Q, R, S…をも同時に得る。

一度分かったと感じても、敢えて既知を未知化し、別の思考作法の可能性を検討し続ける。異なるリバースエンジニアリング、shadowingを繰り返すのだ。

次ページ 「思考を止めないための思考」に続く(3/3)

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渡邉 康太郎(takram design engineering )
渡邉 康太郎(takram design engineering )

アテネ、香港、東京で育つ。大学在学中の起業、ブリュッセルへの国費留学等を経て、2007年よりtakram参加。最新デジタル機器のUI設計から、国内外の美術館でのインタラクティブ・インスタレーション展示、企業のブランディングやクリエイティブ・ディレクションまで幅広く手がける。代表作に、東芝・ミラノサローネ展示「OVERTURE」、NTTドコモ「iコンシェル」のUIデザイン、虎屋と製作した未来の和菓子「ひとひ」など。

多くのプロジェクトを元に体系化した「ものづくりとものがたりの両立」という独自の理論をテーマに、企業のデザイナー・エンジニア・プランナーらを対象とする人事研修、レクチャーシリーズやワークショップを多数実施。国内外の大学やビジネススクールでの講義・講演も。香港デザインセンターIDK客員講師。独red dot award 2009等受賞多数。趣味は茶道。

AXIS、IDEO Tokyoとともに、デザイン思考を広める一般向けの連続イベント「Collective Dialogue - 社会の課題にデザインの力を」を共同主宰。著書に「ストーリー・ウィーヴィング」(ダイヤモンド社)。その他「THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics – Tools – Cases 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計」(BNN新社)の監修・解説を担当。

渡邉 康太郎(takram design engineering )

アテネ、香港、東京で育つ。大学在学中の起業、ブリュッセルへの国費留学等を経て、2007年よりtakram参加。最新デジタル機器のUI設計から、国内外の美術館でのインタラクティブ・インスタレーション展示、企業のブランディングやクリエイティブ・ディレクションまで幅広く手がける。代表作に、東芝・ミラノサローネ展示「OVERTURE」、NTTドコモ「iコンシェル」のUIデザイン、虎屋と製作した未来の和菓子「ひとひ」など。

多くのプロジェクトを元に体系化した「ものづくりとものがたりの両立」という独自の理論をテーマに、企業のデザイナー・エンジニア・プランナーらを対象とする人事研修、レクチャーシリーズやワークショップを多数実施。国内外の大学やビジネススクールでの講義・講演も。香港デザインセンターIDK客員講師。独red dot award 2009等受賞多数。趣味は茶道。

AXIS、IDEO Tokyoとともに、デザイン思考を広める一般向けの連続イベント「Collective Dialogue - 社会の課題にデザインの力を」を共同主宰。著書に「ストーリー・ウィーヴィング」(ダイヤモンド社)。その他「THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics – Tools – Cases 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計」(BNN新社)の監修・解説を担当。

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