Creationは、神様を味方につける競争
広告の仕事は、目的芸術であり、ビジネス芸術であるから、基本、論理的なものだ。神降り領域は、アタマ10%と最後10%くらいで、あとはおおよそ原理に忠実に進む。アイデアの組み立てからアウトプットに至るまで、「こうするとああなるから、それはよい」「そうしておかないとああなってしまう可能性があるからそこにはこういう技が必要」「もしあそこをそう変えるんだったらたぶんここはああしておかないと危ない」とかなんとかが延々続く。
アタマ10%は、「今回こういう種類の試合だ。結果こうなればいいんだ。」というような、ゲームの定義、あるいはコトの本質の見極めのようなこと。羽生善治と同じように、「きっとこのへん」という神降り領域が先にあり、論理が確認するという順番が多い。
最後10%は、アイデアを決定すること。これは、ロジカルに詰めて詰めて脳みそが緊迫しきった後、ぼよぼよーんと、ま、スパとか行かせる感じですかね、脳みそを。そして、決める。無論理に。えいやっと。いわば身体に決めてもらう。
このプロセスの繰り返し。ひとことで言えば、「神様が降りやすくするために、技術水準上げて、論理構造を構築しておく」ということだ。適切ないい感じの時に、たまでいいので降りてきていただく。そのための方法論を技法と呼ぶのだと思う。神降り領域、技法領域、両方重要でそこの関係をコントロールできる人が、しばしば褒められることになる。
英語のGiftに、“天賦の才” という意味があるのは、とても上品なことだ。一度も神様が降りてこないのでは、ものを創る仕事はできない。そこは、英語習得とは、まったく違う。パトリシア・クールというサイエンティストがTEDで、第二言語の習得能力は7歳までを100とすると、10歳まで80。15歳まで50。39歳まで5。という調査結果をプレゼンしている。この種目は7歳まで限定Giftらしい。
どんなジャンルであれ、Creationの仕事というのは、神様を味方につける能力を競い合うものであり、いわば奇跡業なのだ。
たとえ、それがどんなに小さなものであっても。
本コラムの著者、古川裕也氏の初の著書が発売!
日本を代表するクリエイティブディレクターであり、電通のクリエイティブのトップを務める古川氏が、「クリエイティブディレクション」という、今まで漠然としていた技術を初めて体系化。
『すべての仕事はクリエイティブディレクションである。』(9月5日発売)