顧客DB一元化でビジネスを革新
ケース(6)アルク×日本アイ・ビーエム
――2012年9月から鎌田さんはCIOに就任。教材の出版社にCIOがいるのは珍しいのでは?
鎌田:アルクは創業から今年で45周年。よい教材を作れば売れるという時代があり、システムへの投資や、ITのインフラ整備が遅れていました。
各事業部が商品別にシステムやサイトを作り、データベースの管理もバラバラ。例えば当社は全国400を超える教育機関にeラーニングシステム「アルクネットアカデミー」を採用いただいていますが、このシステムを活用されたお客さまは卒業後、社会に出てからも語学を学ぶ必要に直面する機会は容易に想定できます。
しかし、データベースが統合されていないためにお客さまに適切な時期に情報を提供することができていませんでした。
そもそも語学力は継続して学ばないと落ちていくスキルなので、商品を売って終わりではなく、その後もお客さまの状況に合わせた継続的な提案が必要です。
お客さまと生涯にわたりお付き合いできるような体制をITの力を使って実現しよう。そう考え、まず2013年4月から顧客一元化プロジェクトをスタートさせました。
語学習得に対しITができることは大きい。お客さまの購買履歴だけでなく学習履歴をも把握することで、より価値ある提案をしていければと考えています。
吉兼:鎌田さんは単に顧客データベースをどう作るかという発想ではなく、お客さまとこう向き合いたいというビジネス戦略ありきでご相談いただいたので、当初から目指すべきビジョンを共有できました。
鎌田:データベースの統合は、まず大きな箱を作り、そこに投げ込んでいくのが通例。しかしビジネスのゴールを考えれば、統合されたデータがすぐに使えないと意味がない。そこで統合後、すぐにCRMに使えるシステム構築を目指し、IBMさんにサポートをいただきました。
小島:以前は通信教育講座をお申し込みしていただいたお客さまのデータは、各事業部がシステム部門に問い合わせしないと確認することができませんでした。しかし顧客データの一元化が完了したことで、お客さまの学習の進捗状況がひと目でわかるようになり、お客さまにとって必要な情報をタイムリーに提供するなど、マーケティング活動のPDCAが迅速に実現できる環境が整ったと思います。
――データベースの統合はあくまで最初のステップ。顧客一元化プロジェクトはさらなる進展をみせています。
鎌田:2013年4月から半年で顧客データベースの統合を完了。併せて各事業部が個別に発注していたデータセンターや運用業者を統合。さらに複数あったサイトも統合管理し、お客さまがシングルサインオンできるシステムを構築しています。
このシングルサインオンのシステムも比較検討の結果、IBMさんを採用。サイト統合にあたりECのシステムも見直すに際し、シングルサインオンとの連結のしやすさから「IBM WebSphere Commerce」を導入することになりました。
吉兼:IBMはその後のお客さまのビジネス戦略の拡張性を見据え、標準的なプラットフォームを提供しています。その点が、アルクさんのニーズと合致していたと思います。
小田:標準的なプラットフォームであると同時に、「今後、企業とお客さまの関係性はこうあるべき」という革新的なコンセプト、ストーリーが組み込まれている点もIBMのシステムならでは。アルクさんの成長とともに、プラットフォームも進化させていければと考えています。
鎌田:競合他社のシステムも比較検討しましたが、今回IBMさんを採用することになった理由は、私たちが目指していたビジネスのゴールが、IBMさんが掲げる「スマーター・コマース」に近かったからと感じています。
小田:顧客起点でマーケティング、販売、サービス、購買という商取引の全領域をダイナミックに最適化してバリュー・チェーンを構築する「スマーター・コマース」とアルクさんの成長戦略はシンクロしている部分が多いですね。
鎌田:システムを刷新しても社員が使いこなせないと意味がない。そこでIT統制に関する社内規定も見直し、さらに社員向けの説明会、研修の場も作っています。この研修を修了した人は「チャンピオン」に認定。“チャンピオンベルト”も渡して(笑)、皆が楽しみながら知識を身につけてもらえるよう、社内コミュニケーションにも工夫をしています。
――今後のプロジェクトの展望は?
鎌田:今期はデータベース統合、シングルサインオンの構築、サイトリニューアルというインフラ部分の整備を行っています。来期はこのインフラを使って、新しい事業の開発にも着手していきます。
具体的には、オンラインでのサービス提供を考えています。昨今オンライン上での語学学習サービスへの企業参入が増えていますが、優れた教材があり教えるプロも抱えながら、ITインフラが整っていないばかりに、後れを取ってしまったと考えています。これまで「モノ」を売ることにしか対応していなかった当社のオンラインショップが今回、「サービス」も売れるプラットフォームに刷新されることで、いよいよアルクの資産をIT領域でサービスとしても提供していけると考えています。
吉兼:鎌田さんが掲げる顧客一元化プロジェクトは、3カ年計画と伺っていますが、そのゴールを伺い、このプロジェクトがアルクさんの経営計画の根幹を担っていると感じています。単に求められるソリューションを個別に提案するのではなく、目指すべきゴールを共有しながら、求められるスケジュール通りにプロジェクト実現に貢献していければと思っています。
(本文中・敬称略)
WebSphere Commerce
お問い合わせ/日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 スマーター・コマース営業部
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